生成AIを活用して、がんや難病の創薬につなげる取り組みが始まる
生成AIとは、テキスト、画像、音声などの新たなデータを生成するAIのことです。創薬においては、膨大な遺伝子情報や臨床データの中から、治療の標的となる分子や薬剤を探索する際に、生成AIを活用することで、従来よりも効率的かつ効果的に創薬プロセスを進めることが期待されています。
◎生成AIを使った創薬のイメージ
生成AIを使った創薬の具体的なイメージは、以下のとおりです。
- がんや難病の遺伝子情報などのデータを解説
まず、がんや難病の遺伝子情報や臨床データを、生成AIを用いて解説します。これにより、疾患の原因や経過をより深く理解することができます。
- 原因を特定、標的にくっつく抗体や細胞を予測
次に、生成AIを用いて、疾患の原因となる分子や細胞を特定します。このとき、標的分子や細胞に結合する抗体や細胞を予測することもできます。
- 薬開発へ
最後に、特定した標的分子や細胞に作用する薬剤を開発します。生成AIは、薬剤の候補となる分子の設計や、薬剤の副作用の予測にも活用できます。
◎厚生労働省の取り組み
厚生労働省は、2023年度から、生成AIを活用した創薬の取り組みを開始します。この取り組みでは、医薬基盤・健康・栄養研究所が収集した、免疫が深く関わる病気のデータを活用し、治療の標的を探し、適合する薬を予測するシステムの開発を目指します。
◎取り組みの具体的な内容
具体的には、以下の5つのステップで取り組みが進められます。
- データの収集
医薬基盤・健康・栄養研究所が収集した、免疫が深く関わる病気の遺伝子情報や臨床データを収集します。
- データの解析
収集したデータを、生成AIを用いて解析し、疾患の原因や経過を理解します。
- 標的分子の特定
解析の結果から、疾患の原因となる分子や細胞を特定します。
- 薬剤の候補の探索
特定した標的分子や細胞に結合する抗体や細胞を探索します。
- 臨床試験の実施
探索した薬剤の候補を、臨床試験で評価します。
◎取り組みの成果
この取り組みが成功すれば、以下の成果が期待されます。
- 創薬の効率化・加速化
- 従来よりも効果的な薬の開発
- 難治性疾患の治療法の開発
◎今後の展望
今後、生成AIの技術がさらに進歩すれば、創薬プロセスのさらなる効率化・加速化が期待されます。また、生成AIは、創薬だけでなく、診断や治療など、医療のさまざまな分野で活用されることが期待されています。
◎生成AIを活用した創薬の課題
生成AIを活用した創薬には、以下の課題があります。
●データの質と量
生成AIが正確な結果を出すためには、質の高いデータが大量に必要です。しかし、がんや難病の研究は、まだ十分に進んでおらず、必要なデータが十分に蓄積されていないのが現状です。
●予測の精度
生成AIは、あくまでも予測を行うものです。そのため、予測の精度が十分に高くないと、臨床試験で失敗するリスクがあります。
●倫理
生成AIは、遺伝子情報や臨床データなどの個人情報を取り扱うことになります。そのため、倫理的な配慮が必要です。
まとめ
今後、これらの課題を克服しながら、生成AIを活用した創薬の取り組みが実用化されれば、従来の創薬プロセスを大きく変え、がんや難病、及び希少疾患の治療に新たな道を開くことが出来るのではないでしょうか。
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