安来市の未来を担う、産業振興と人材確保、そして観光振興のシナジー効果(安来市政の課題は?)

2024年12月3日

 安来市は、スマートインターチェンジの新設や出雲村田製作所の進出など、新たな産業振興の局面を迎えています。しかし、同時に人口減少や働き手不足といった課題も抱えています。これらの課題を解決し、持続可能な地域社会を実現するためには、産業の振興、働き手の確保、観光産業への取組みの三つの側面から総合的な戦略を構築することが不可欠と言えます。

産業の振興

 多様な産業の集積と地域経済の活性化

出雲村田製作所の進出は、安来市に新たな雇用を生み出し、地域経済の活性化に大きく貢献することが期待されます。しかし、一企業に頼りきりになるのではなく、多様な産業を誘致し、産業構造の多角化を図ることが重要です。

中小企業の育成
 地域に根ざした中小企業の育成を支援し、多様な製品やサービスを提供できる産業構造を構築する。
また、スマートインターチェンジ周辺には、物流拠点や商業施設の集積地を形成し、産業クラスターを構築することで、雇用創出効果を最大化することができます。
先端産業の誘致
 出雲村田製作所のような電子部品製造業を誘致することは大切なことです。ただそれだけでなく、IoTやAIといった先端技術を活用した企業の誘致も積極的に進めるべきです。
地域産業の活性化
 地域の伝統工芸や農林水産品といった地域資源を活かした産業を育成し、高付加価値化することで、地域経済の活性化を図るべきです。
また、地域産品の製造・販売や、観光産業との連携による新たなビジネスモデルの創出も考えられます。例えば、地元の特産品を使った加工食品の製造や、観光客向けの体験型プログラムの開発など、地域資源を活かした産業振興は、地域住民の生活を豊かにし、定住促進にもつながります。

働き手の確保

 若者の人口減少に歯止めをかけ、多様な働き方を支援

 安来市の人口減少は、若者の流出が大きな要因となっています。この問題を解決するためには、若者が地元で働き、生活できるような環境を整える必要があります。具体的には、以下の施策が考えられます。

  • 教育環境の充実
    高校生に対する進路指導の強化や、地元企業との連携によるインターンシップの実施など、若者が地元で働くことを身近に感じられるような取り組みを進める。
  • 子育て支援の充実
    保育所の整備や、子育て中の親を支援する制度の拡充など、安心して子どもを育てられる環境を整える。
  • 多様な働き方の支援
    テレワークや副業の推進、外国人による地域おこし協力隊の活用など、柔軟な働き方を支援することで、地域外からの移住を促進する。
  • 女性活躍の推進
    女性の就業率向上を図り、多くの女性が社会で活躍できるよう官民あげて取り組む。
  • 外国人労働者の受け入れ
    労働力不足は、避けては通れない問題になるのは明らかで、外国人労働者の受け入れを積極的に、且つ早急に検討し、多様な人材の活用を促進する

特に、女性の社会活動への参画を促進することで、多様な目線で活躍できる社会の実現を目指すべきです。

観光産業への取組み

 足立美術館の集客力を最大化し、新たな観光資源を創出

 足立美術館は、安来市の貴重な観光資源ですが、他の観光地の集客力が低いという課題があります。
足立美術館の集客力を最大限に活かし、周辺地域の観光地との連携を強化することで、観光客の滞在時間を延ばし、消費を増やすべきです。
この課題を解決するためには、以下の施策が考えられます。

  • 観光ルートの開発
     足立美術館を起点とした観光ルートを開発し、周辺の観光地との連携を強化する。例えば、月山富田城跡や安来清水寺を結ぶ歴史文化散策コースや、自然豊かな地域を巡るサイクリングコースなどを開発する。
    月山富田城跡においては、戦国大名・尼子氏や家臣である山中鹿之介を題材にした資料館を、安来清水寺においては、厄払いの寺と三重塔や中海を望む展望台を主体にした観光ルートを企画し、そして自然豊かな中海沿岸を爽快に走るサイクリングコースなどのルートを開発して見てはどうだろう。
  • 観光情報の発信
     SNSやウェブサイトを活用し、積極的に観光情報を発信する。特に、海外からの観光客の誘致を視野に入れ、多言語対応の観光案内サイトを整備する。そして、安来節演芸館を利用して安来節だけでなく神楽・歌舞伎・落語・漫才など多彩な催しで集客をはかる。
  • 体験型観光の推進
     地域の文化や歴史に触れることができる体験型の観光プログラムを開発します。
  • 観光インフラの整備
     観光客が快適に滞在できるよう、交通アクセスや宿泊施設、飲食店・土産売店などの観光インフラを整備するべきです。
  • 地域住民の観光意識の向上
    地域住民が観光客に対して積極的に接客できるよう、観光に関する「おもてなしの心」を育む、研修会を実施する。
    その中でも、世界的に有名な足立美術館には、国内はもとより国外からも多くの観光客が訪れますので、地元でボランティアガイドを募り、海外観光客向けの英語・韓国語などの会話研修会を行うことで、安来の観光情報を伝えたりSNSで発信したりできる可能性があります。

また、地域住民が主体となって観光資源を開発・運営するような仕組みづくりも重要です。例えば、地域住民が運営する観光案内所を設置したり、地元の特産品を使ったお土産品を開発したりするなど、地域全体で観光振興に取り組むことが大切です。

三つの側面を連携させた総合的な戦略

 産業振興、働き手の確保、観光産業への取組みの三つの側面は、相互に関連しており、それぞれが他の側面を補完し合う関係にあります。例えば、産業の振興によって雇用が創出されれば、働き手の確保が容易になり、観光産業の活性化にもつながります。また、観光産業の活性化は、地域の魅力向上につながり、人材の定着率を高める効果も期待できます。

これらの側面を連携させた総合的な戦略を策定し、実行していくことが、安来市の持続可能な発展には不可欠だと考えます。

今後の展望

 安来市は、スマートインターチェンジの新設や出雲村田製作所の進出など、新たな発展の機会を迎えています。しかし、同時に人口減少や働き手不足といった課題も抱えています。これらの課題を克服し、魅力ある地域社会を実現するためには、市民、企業、行政が一体となって、長期的な視点を持った取り組みを進めていく必要があります。

具体的には、以下の取組が重要になります。

  • 地域ビジョンの策定
    将来の安来市の姿を描き、具体的な目標を設定する。
  • 関係機関との連携強化
    地域の企業、大学、NPOなど、様々な関係機関と連携し、課題解決に向けて共同で取り組む。
  • 市民参加の促進
    市民が主体的に地域づくりに参加できるような仕組み(ポランティア活動に頼らない)を構築する。
  • 柔軟な対応
    社会情勢の変化に対応するため、常に戦略を見直し、早めに改善していく柔軟な体制づくりが望まれます。

◎まとめ

 安来市政が抱える課題は、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、産業の振興、働き手の確保、観光産業の取組みという3つの柱を軸とした総合的な取り組みを継続的に行うことで、持続可能な地域社会を実現することが可能だと考えます。
安来市の未来は、市民、企業、行政が協力し合って創られていく事を期待しています。

⭕️シナジー効果とは

 複数のものが相互に作用し合い、単独で活動したときよりも大きな効果が生まれることを指します。ビジネスシーンでは、複数の企業や事業を統合したり、社内の部署が協力したりすることで、相乗効果を生み出すことを意味します。

⭕️産業クラスターとは

 特定分野の企業や大学、研究機関、関連機関などが地理的に集積し、競争と協力を通じて新たな付加価値(イノベーション)を創出する状態を指します。 

産業クラスターの形成には、次のような要素が重要です。

  • 「知恵」の場としての大学・研究所(知識力)
  • イノベーションを育む「多様性」(変革力)
  • 「カベ」を乗り越える力(連携力)