宍道高校の日本語教育への強化、外国人生徒の多様な学びを支える取り組み

 島根県松江市の県立宍道高校が、増加の一途をたどる外国人生徒への日本語教育に力を入れています。2025年度には、指導教員を増員し、校舎を増設するなど、教育体制の拡充を図る方針のようです。背景には、県内の外国人住民の増加と国籍の多様化があります。

宍道高校は、2021年度に外国人生徒の重点受け入れ校に指定されて以来、外国人生徒の数は増加の一途をたどっています。生徒たちの出身国や母語も多様化し、日本語の習熟度も多岐にわたる。こうした状況を踏まえ、宍道高校は生徒一人ひとりに寄り添った教育を提供されることが期待されています。

しかし、日本語指導の現場では、多くの課題に直面しています。

  • 日本語の理解にばらつきがある
     
    日常会話は問題なくこなせる生徒でも、授業で使用される専門用語になると理解が追いつかないことがある。
  • 日本語の習得能力にも個人差がある
     
    聞く、話す、読む、書くといった技能の習得度合いは生徒によって大きな個人差がある。
  • 学習の理解度にも差がある
     
    学習の理解度自体にも差があり、画一的な授業では対応しきれないという課題が浮き彫りになっている。

これらの課題に対し、宍道高校は、以下のような対策を講じています。

  • 習熟度別のグループ学習
     
    日本語の授業では、生徒の習熟度に合わせて複数のグループに分け、同じ教室で学ぶ形態を取っている。
  • 担当教員が横断的に指導
     
    担当教員が横断的に指導を行い、日本語指導員が補助として支援に入ることで、個々の生徒の理解度に合わせた指導を実現している。
  • 日本語指導員のサポート
     
    授業中、必要に応じて日本語指導員が生徒の母語や易しい日本語を用いて説明することで、理解を深める手助けをしている。
  • 教科における配慮
     
    日本語教育にとどまらず、現代国語、歴史総合、化学基礎など6科目でも外国人生徒向けの特別な授業が展開されている。
  • 少人数指導
     
    一斉指導の限界を認識し、少人数でのきめ細かい指導に重点を置いている。
  • 校舎の増設
     
    2025年度には、少人数指導などを目的とした校舎を増設する。

これらの取り組みから、宍道高校が目指すのは、単に日本語を教えるだけでなく、生徒一人ひとりの学習ニーズに合わせた丁寧な指導だということがわかります。

外国人生徒にとって、言葉の壁は大きな障壁となります。しかし、適切なサポートがあれば、彼らはその能力を十分に発揮し、社会で活躍するだけの基礎知識は身につけることができると思います。宍道高校の取り組みは、多文化共生社会の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。

しかし、課題も残されています。例えば、

  • 多様な文化背景への理解
     
    生徒たちの文化背景を理解し、尊重した指導を行う必要があること。
  • 地域社会との連携
     
    地域社会と連携し、外国人生徒の学習や生活をサポートする体制を構築する必要があること。
  • 進路指導の充実
     
    外国人生徒の進路希望に合わせたきめ細かい指導を行う必要があること。

これらの課題を克服し、外国人生徒が安心して学び、成長できる環境を整備することが、今後の宍道高校、そして地域社会に求められている課題だと感じました。

外国人生徒の増加は、今後の地域社会にとっても重要な課題であります。
島根県内の外国人住民数は、10年前(2015年度)と比較して大幅に増加しており、その背景には経済活動のグローバル化や国際結婚の増加など、さまざまな要因があるようです。
こうした変化に対応するためには、教育現場での支援体制の充実が不可欠であり、宍道高校の取り組みはその先駆けとも言えるのではないでしょうか。

まとめ

 宍道高校では、増加する外国人生徒に対応するため、日本語教育の充実に努めています。日本語の習熟度に応じた指導や、少人数制の授業、母語を活用した学習支援など、多様なアプローチを取り入れ、個々の生徒の学習を支援しています。今後も、教員の増員や校舎の増設を通じて、より質の高い教育環境を整え、多文化共生の実現に貢献することが期待されています。

また、出雲村田製作所を代表とする大手工場が多く立地している出雲市や、これから大手工場が立地される安来市などは、宍道高校で学んだ外国人生徒をいかに受け入れできるかの対策が、今後必ずや必要になると思われます。