NTT法廃止の課題:公正競争、地域格差、ユニバーサルサービス、国家安全保障、消費者利益
NTT法は、旧電電公社を民営化した際に制定された法律です。NTT法には、NTTにユニバーサルサービス義務、研究成果の公開義務、外資規制などの義務が課せられています。
自民党は、NTT法の廃止を検討しており、2025年を目途に廃止を目指しているようです。NTT法の廃止には、NTTの競争力強化や、通信サービスの多様化などのメリットが期待されているようです。しかし、一方で、NTT法の廃止によって、以下の課題が懸念されています。
課題1:公正な競争の阻害
NTTは、旧電電公社から引き継いだ「特別な資産」を保有しています。この「特別な資産」は、インターネット接続など通信サービスを提供する上で欠かせない設備であり、通信業界では「ボトルネック設備」と呼ばれています。
NTTは、全国に張り巡らされた光ファイバー網や電柱などの「ボトルネック設備」を保有しています。これらの設備は、インターネット接続や音声通話などの通信サービスを提供する上で欠かせないものです。
NTT法が廃止されると、NTTは競合他社に対して設備利用料を高く設定したり、設備の利用を拒否したりすることができるようになります。これによって、競合他社の通信サービスの提供が困難となり、公正な競争が阻害される可能性があります。
これらのことから、NTTの独占力が強化され、競合他社がNTTに対抗することが難しくなる可能性があります。
課題2:ユニバーサルサービスの低下
NTT法では、NTTにユニバーサルサービス義務が課せられています。ユニバーサルサービス義務とは、すべての国民が一定水準の通信サービスを利用できるようにする義務であります。
NTT法が廃止されれば、NTTはユニバーサルサービス義務を負わなくなり、これにより、NTTが不採算地域から撤退する可能性があり、ユニバーサルサービスの低下が懸念されます。
課題3:通信サービスの価格上昇
NTT法では、NTTの研究成果の公開義務が課せられています。研究成果の公開義務とは、NTTが研究開発した成果を、競合他社も利用できるようにする義務のことです。
NTT法が廃止されれば、NTTの研究成果の公開義務がなくなり、競合他社がNTTの研究成果を活用しにくくなり、通信サービスの開発競争が停滞する可能性があります。また、通信サービスの価格上昇にもつながる可能性があります。
課題4:経済安全保障上のリスク
NTT法では、NTTの外資規制が定められています。外資規制とは、外国資本の参入を制限する規制であります。
NTT法が廃止されれば、NTTの外資規制がなくなります。これにより、外国資本がNTTを買収する可能性が高まり、外国資本がNTTを買収した場合、NTTの通信設備や技術が外国の手に渡り、経済安全保障上のリスクが高まる可能性がある。
以上の課題を踏まえると、NTT法の廃止には慎重な検討が必要です。
NTTの競争力強化や、通信サービスの多様化を図るためには、独占力の強化やユニバーサルサービスの低下、通信サービスの価格上昇、経済安全保障上のリスクなどの課題を解決できるような対策を講じることが重要だと思います。
具体的には、以下の対策が考えられます。
- 競争力強化と独占力の抑制の両立を図るために、競争法や独占禁止法の強化を検討する。
- ユニバーサルサービスの維持・拡大を図るために、国や地方自治体による支援制度の拡充を検討する。
- 通信サービスの価格上昇を抑制するために、競争促進のための規制緩和を検討する。
- 経済安全保障上のリスクを低減するために、外資規制の強化や技術流出の防止策を検討する。
まとめ:
NTT法の廃止によって、公正な競争が阻害され、地域間の格差が拡大し、ユニバーサルサービスの実現が困難になり、国家安全保障上のリスクが高まり、消費者利益が損なわれる可能性があります。
NTT法の廃止を検討する場合には、これらの課題を十分に考慮し、適切な対策を講じた上で、廃止の是非を判断することが重要であると思います。
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