なぜ日本は電気代が高いのか ?

2023年8月17日

東京電力をはじめ、沖縄、中国、四国、北陸、東北、北海道など電力7社による電気料金の値上げを、政府は2023年6月1日から了承しました。
中部と関西、九州の電力3社は、現時点では値上げを予定していません。)

特記事項:上記の、電力7社+3社を従来からの電力会社として「旧電力10社」又は「大手電力」と記載させていただき、新しく参入した新規電力会社と便宜上分けさせていただきます。)

しかし、電力自由化の根幹を問う事件が立て続けに明らかになりました。

大手電力の独占禁止法違反(カルテル)

 中国電力、中部電力」、九州電力は2018年秋以降、関西電力と大規模工場向けの「特別高圧電力」や企業向けの「高圧電力」を対象に、相手の管轄区域で互いに顧客獲得を自制するよう示し合わせたとされています。

複数の大手電力グループで起きていた情報漏洩

 地域エリアの送配電網を独占的に担っている、各大手電力の送配電が託送システムで管理している顧客情報を、親会社である各大手電力の社員が閲覧していたという事件です。

日本の電力自由化は電気代を値上げするためにあるのか?
政府も値上げを認めるからには、不祥事の背景にある発送電分離や電力市場改革が十分に検証し改革されなければ、「電力の自由化」など何の意味もありません。

電力自由化の妨げとなっている課題はいくつかあります。

⚫️電力システムの改革が十分に進んでいないこと。

国際的にみて高いといわれる日本の電気代を引き下げるため、
2016年に電力自由化が実施され、電気を「売る」新規参入者を募って競争原理を導入しようとしたのです。

新規参入の電力会社がビジネスを行うには、電気を「送る」送配電事業者の中立性が重要です。
というのも、送配電ネットワークの利用は、電気を売るうえで欠かせないものだからです。
電力ビジネスの土台である送配電ネットワークが独占状態のままでは、公平な競争はできないからです。


しかし、日本の配送分離は
持株会社の下に(傘下として)発電会社、送配電会社、小売会社を置く「持株会社方式」と、
発電・小売会社の下に(子会社として)送配電会社を置く「発電・小売親会社方式」の
両方式が認められています。


一方、欧米では送電ネットワークを運用する機能を別の組織が行う「所有権分離」というスタイルがとられています。
欧米のように、独立系統運用者と呼ばれる別組織が送配電の運用を行い、発電や小売を行う電力会社からは完全に独立した「所有権分離=別会社」体制にしなければ本来の電力自由化と電力システムの改革にはならないと思います。

⚫️電力システムの改革が進まない最大の理由が「託送料金」の存在である。

送電網は、電気を送電するために必要なインフラです。
米国やEUでは、1990年代以降の電力自由化の流れの中で「発送電分離」が進められてきました。
日本では、送電網は送電事業者(=旧電力10社)が独占的に管理しています。
そのため、新規参入企業は、送電事業者(=旧電力10社)から送電網の利用料(=託送料金)を支払わなければなりません。
これは、旧電力10社が保有する送配電網を新規電力会社が利用する際に、旧電力10社へ支払う使用料金で「託送料金」と言われています。
託送料金」は国民が支払う電気料金に含まれています。

この「託送料金」は、高ければ高いほど新規電力会社にとっては不利になりますが、旧電力10社にとってはほとんど痛みがありませんし、かえって「託送料金」を高くしようという論理が働くことになります。

⚫️人と情報の遮断ができていないため、公正・公平な競争ができていない。

旧電力10社どうしがお互いに販売価格のカルテルを結んだり、新規電力会社の参入を拒むため顧客情報を不正に閲覧する、などの問題が起こっています。
旧電力10社から分社化された送配電部門を通じて、競合する新規の電力会社の顧客データを閲覧した問題です。
どの需要家がいつ、どの新規電力会社に切り替えたか。」など、本来は送配電事業者と小売電気事業者の間でそのような情報があってはなりません。

しかし、旧電力10社が持つ一般送配電事業と小売電気事業の間では情報が筒抜けになります。
一方で、新規電力会社にはそのような情報が全くありません。
と云うことは、旧電力10社に対して新規電力会社の方は、最初から持っている情報の量・質に格差があり過ぎるため、不公平な競争を強いられていると言わざるを得ません。

情報の非対称性が大きすぎて、公正・公平な競争ができていないのです。
だから、旧電力10社が新規電力会社の顧客を奪い返すというような問題も起こっています。
旧電力10社は市場シェアを独占しているため、このようなことが当たり前に行われる状況では、電力自由化・電力システムの改革など「絵に描いた餅だと思われます。

送電網が完全に独立した「所有権分離=別会社」体制になっていないから!
これらの理由により、日本の電力市場は新規参入が難しい構造になっています。

そのため、新規の電力会社が参入しても競争がしづらく、旧電力10社が電力市場を支配している状態が続いています。

このような状況では、電気代を引き下げるための電力自由化など、やっていないに等しく何の役にも立ちません。

政府は、電力の公益性を深く自覚し、早急に国民のための手立てを講じていただきたいと思います。

暮らし

Posted by Ka Shiba