歯科医療に革命をもたらす「歯生え薬」の実用化を目指し来夏に治験
「歯生え薬」の実用化に向けた最新動向
歯を生やす「歯生え薬」の実用化に向けた研究が、日本のチームによって進められています。2024年7月には健康な成人を対象とした臨床試験(治験)が開始され、30年ごろの実用化を目指しているそうです。
◎「歯生え薬」の仕組み
歯生え薬は、歯の成長を抑制するタンパク質「USAG-1」の働きをなくす抗体薬です。人には乳歯、永久歯とは別に、新たな歯になり得る「芽」のようなものがあるそうですが、通常は生えずになくなります。歯生え薬はこの芽に働きかけ、成長を促します。
◎「歯生え薬」の開発
歯生え薬の開発を主導しているのは、京都大学発のベンチャー企業「トレジェムバイオファーマ」です。同社は、歯の成長を研究する髙橋克氏らの研究成果を基に、歯生え薬の開発を進めてきました。
2018年には、歯の数が少ないマウスに歯生え薬を投与し、歯を生やすことに成功しました。2021年には、人と同様、乳歯と永久歯があるフェレットでも永久歯の内側から新たな歯が生えたことが報告されています。
◎「歯生え薬」の臨床試験
2024年7月からは、健康な成人を対象とした第1相臨床試験が開始されます。この試験では、歯生え薬の安全性や有効性を評価します。
2025年からは、生まれつき永久歯の数が少ない「先天性無歯症」の2~6歳の子どもを対象とした第2相臨床試験が開始される予定です。この試験では、歯生え薬の安全性や有効性に加えて、歯の形や大きさなどの歯質を評価します。
◎「歯生え薬の可能性
歯生え薬が実用化されれば、歯の欠損や喪失に悩む人々の生活を大きく改善する可能性があります。
先天性無歯症の患者は、永久歯がほとんどまたはまったく生えないため、入れ歯やインプラントなどの治療が必要となります。歯生え薬が実用化されれば、こうした治療を必要とせず、天然の歯で食事や会話を楽しむことができるようになると思われます。
また、虫歯や歯周病などの原因で歯を失った人も、歯生え薬で新たな歯を生やすことができる可能性があります。
◎「歯生え薬の課題
歯生え薬の開発には、依然として課題が残されています。
1つ目は、歯生え薬の有効性をさらに高めることです。現時点では、歯生え薬によって生えた歯は、天然の歯と比べて大きさや形が不完全なことがあります。
2つ目は、歯生え薬の安全性をさらに確認することです。歯生え薬には、免疫反応や副作用などのリスクが懸念されています。
これらの課題を克服し、安全で効果的な歯生え薬が開発されれば、歯科医療に革命をもたらすことになるでしょう。
まとめ
「歯生え薬」の今後
歯生え薬の開発は、世界各国で進められており、日本は世界をリードする立場にあります。
今後、歯生え薬の臨床試験が順調に進み、安全性と有効性が確認されれば、30年ごろには実用化される可能性があります。
歯生え薬の実用化は、歯科医療の新たな可能性を切り開くことになるでしょう。
<言葉の意>
フェレット(ferret)は、おもにヨーロッパでネズミの駆除やアナウサギ狩りに使われてきたイタチに似て,全身が白色のふわふわした毛で覆われた家畜化された動物です。
近年ではペットや実験動物として飼われています。
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