宇都宮LRTの挑戦と成果、開業前の懸念を乗り越えてLRTが地域をけん引

2025年1月18日

 宇都宮市に開業した次世代型路面電車(LRT)「ライトライン」が、開業初年度から目覚ましい成果を上げているようです。純利益は想定の3倍に達し、沿線地域の活性化にも大きく貢献。地域交通のあり方を示す好例として、国内外から注目を集めています。

ライトライン(LRT)の概要

 ライトライン(LRT)は、宇都宮市と芳賀町を結ぶ全長14.6kmの路線です。市町などが出資する第三セクターが運行を担い、沿線には高校や大学、自動車メーカーの拠点などが点在しています。この路線は、地域住民の足としてだけでなく、通勤・通学、さらには企業活動を支える重要な役割を担っています。特に、自動車関連企業の集積地とJR宇都宮駅を結ぶことで、従業員の通勤手段の選択肢を広げ、地域経済の活性化に貢献しています。

開業前の懸念

 ライトライン(LRT)の開業前には、いくつかの懸念がありました。特に大きかったのは、膨らむ事業費が効果に見合わないのではないかという批判と、線路が既存車線をつぶすことで交通渋滞が悪化するのではないかという懸念です。

大規模な公共事業に対しては、費用対効果が厳しく問われるのは当然であり、市民の間でも様々な意見があったようです。また、路面電車という特性上、道路上に線路を敷設する必要があるため、既存の交通の流れに影響を与える可能性も指摘されていました。

開業後の効果

 しかし、開業後のライトライン(LRT)は、これらの懸念を払拭するほどの効果を発揮しています。

  • 利用者数の伸び
     最も大きな効果は、想定を大きく上回る利用者数の伸びです。これにより、運行会社の収益が大幅に向上し、純利益が想定の3倍に達するという驚異的な結果につながりました。これは、ライトライン(LRT)が地域住民に受け入れられ、日常の移動手段として定着したことを示しています。
  • 沿線地域の活性化
     ライトライン(LRT)は、沿線地域の活性化にも大きく貢献しています。
    市全体の人口は減少傾向にあるにもかかわらず、LRTの敷設決定後は、沿線にマンションや分譲住宅の造成が進み、新たな住民の流入が見られます。これは、ライトライン(LRT)の開業が沿線地域の魅力向上に繋がり、住みやすい環境として評価されていることを示しています。
  • 新設小学校の児童数増加
     約30年ぶりに沿線に新設された市立小学校では、児童数が市内最多となるという現象が起きています。これは、ライトライン(LRT)の開業が子育て世代の移住を促進し、地域の人口構成に変化をもたらしていることを示しています。
  • 交通渋滞の緩和
     
    開業前に懸念されていた交通渋滞についても、実際には改善が見られるという声も上がっています。これは、ライトライン(LRT)への乗り換えが進んだことで、自家用車の利用が減少し、道路の混雑が緩和されたためと考えられます。

これらの効果は、ライトライン(LRT)が単なる移動手段ではなく、地域全体の活性化を牽引する力を持っていることを示しています。

今後の構想

 宇都宮市は、ライトライン(LRT)を地域の発展の核と位置づけ、更なる構想を描いています。

  • バス路線との連携強化
     市内交通の背骨となるLRT路線の各LRTの停留場と、市内の各地をバス路線で繋ぐことで、公共交通ネットワークの充実を図ります。これにより、市民はより便利に、そして効率的に移動できるようになります。
  • パーク&ライドの推進
     LRTの停留場には駐車場を併設し、マイカーからの乗り換えを促すパーク&ライドを推進します。これにより、中心市街地への自家用車流入を抑制し、交通渋滞の緩和と環境負荷の低減を目指します。
  • 中心部への延伸
     JR宇都宮駅の東口を起点とする現在のLRT路線を、栃木県庁や市役所、繁華街がある駅西側へ延伸することを目指しているようです。これにより、更なる利用者の増加と、中心市街地の活性化が期待されます。

まとめ

 ライトライン(LRT)の成功は、地方都市における公共交通のあり方に新たな可能性を示唆しています。単なる交通手段の提供に留まらず、地域全体の活性化、ひいては都市の持続可能性に貢献する公共交通の姿を提示していると言えるでしょう。

特に重要なのは、ライトライン(LRT)が沿線地域の価値を高め、人々の居住選択に影響を与えている点です。これは、交通インフラ整備が単なる移動の効率化だけでなく、都市の魅力向上、ひいては地域経済の活性化に繋がることを示しています。

宇都宮市の事例は、他の地方都市にとっても参考になる点が多いと思います。地域特性に合わせた公共交通網の整備、そしてそれを核とした街づくりは、今後の地方都市の発展において重要な戦略となる可能性を秘めていると言えるでしょう。

 ライトライン(LRT)の今後の展開、特に中心部への延伸が実現することで、どのような更なる効果が生まれるのか、注目していきたいと思います。この成功事例が、日本各地の地域交通の未来を照らす灯台となることを期待しています。

<語意>

パーク&ライドとは、

 自宅から最寄りの駅やバス停に自動車で行き、駐車場に車を停めてから公共交通機関を利用して目的地まで移動する交通システムです。

パーク&ライドは、ヨーロッパで発案され、欧米の大都市周辺で普及しています。日本では、郊外の駅周辺でも駐車場が少ない上に駐車料金も高いので、本格的に普及していません。