日産の自主再建は困難か?…ホンダとの統合見送りと鴻海の動向

 日産自動車がホンダとの経営統合協議を打ち切った背景には、日産再建策の実効性に対するホンダ側の強い疑念がありました。ホンダは、業績不振の日産に対し、具体的な合理化策を提示するよう求めていましたが、日産の対応は危機感が感じられず、ホンダの期待を大きく下回るものだったようです。

そこでホンダは、経営の主導権を握って日産の合理化策をスピードを持って進めるため、当初想定していた持ち株会社ではなく、新たに日産株を取得する子会社化案を打診したようです。

 両社の株式の時価総額には大きな差があります。
最近では
ホンダが約7兆6千億円に対し、
日産は1兆5千億円程度にとどまります。

それは持ち株会社の方式で、日産の経営に強く関与できないまま日産がさらなる業績悪化に陥れば、ホンダ自体の経営にも波及して共倒れのリスクが大きくなるため、それを避けるために子会社化を提案した次第です。

1. 日産が、ホンダとの経営統合協議を打ち切る方針を固めた、その背景は?

①日産のリストラ策の甘さに苛立つホンダと、
②対等な立場での統合にこだわる日産のメンツが、
ぶつかり合うことになった。 

 日産は昨年11月、従業員の大幅削減や生産能力の縮小などを盛り込んだ合理化策を発表しました。しかし、その内容は既存の対策の域を出ず、抜本的な改革には程遠いものでした。特に、工場の閉鎖など抜本的な対策を打ち出せなかったことは、ホンダの不信感を増幅させる要因となりました。

ホンダは、日産との統合を通じて、電動化や自動運転といった次世代技術の開発を加速させたいと考えていました。しかし、日産の現状では、そのような戦略的な提携は困難だと判断したのでしょう。

2. 日産が合理化策を打ち出すも、そのスピード感が足りない?

 日産の合理化策が遅れた背景には、社内の抵抗勢力の存在や、労働組合との交渉の難航などが考えられます。しかし、それにしても、ホンダが求める水準の合理化策を提示できなかったことは、日産の危機管理能力の欠如を示すものです。

日産は、カルロス・ゴーン氏の逮捕以降、経営体制が混乱し、企業文化も失われつつあります。そのような状況下では、迅速かつ大胆な改革を実行することは難しいのかもしれません。

3. 今後は鴻海(ホンハイ)の動向が日産自主再建の焦点か?

  日産は、ホンダとの交渉をてこに社内を説得し、リストラをもっと深く掘り下げ、業績回復を確実にすることができなかっただろうか?
ホンダとの統合協議打ち切りにより、日産は新たな提携先を探す必要に迫られています。その中で、注目されるのが台湾の鴻海精密工業の動向です。

鴻海は、日産の筆頭株主であるルノーからの株式取得を目指しており、日産への経営参画に強い意欲を示しています。
鴻海は、外部からの圧力なしには、日産の自主再建は難しいと考えているようです。

日産の自主再建は困難では?

 日産の自主再建は、非常に厳しい道のりになるでしょう。

  • まず、経営体制の立て直しが急務です。
    日産の24年度の生産規模は実質320万台程度しかなく、稼働率は6割程度しかありません。一般的に自動車メーカーは稼働率が8割以上ないと利益が出にくいと言われています。工場閉鎖は、再生・反転のための「象徴」として必要であり、これはリストラを成功させるための一つのテクニックでもあります。しかし、日産はそこに踏み込めないままでいます。
  • 次に、具体的な合理化策の実行です。
    聖域なき構造改革を早急に行い、コスト削減を徹底する必要があります。
  • さらに、新たな成長戦略の策定です。
    電動化や自動運転といった次世代技術の開発に注力し、競争力を高める必要があります。

これらの課題を克服するためには、外部からの圧力が必要かもしれません。日産は「自力再建」を目論むが、客観的情勢からみて、それはもう無理でしょう。

次の展開でも、鴻海を含めて他社と組むしか生き残りの道はないと思われます。

まとめ

 鴻海のような企業が経営に参画することで、日産は変わることができるかもしれません?

しかし、鴻海日産をどのように変えようとしているのか、具体的なビジョンはまだ見えていません。鴻海の参画が、日産にとってプラスに働くかどうかは、今後の交渉次第と言えるでしょう。

いずれにしても、日産は早急に新たな戦略を打ち出し、実行に移さなければ、生き残る道はないでしょう。