これまでの技能実習制度を廃止し、「人材確保・育成」を目的とした新制度「育成就労」を創設

外国人技能実習・特定技能両制度の見直しを検討する政府有識者会議は24日、技能実習を廃止し「人材確保・育成」を目的とした新制度「育成就労」を創設する最終報告をまとめました。

技能実習制度は、発展途上国から日本に人材を受け入れ、日本の技術や技能を移転することを目的として、1993年に創設された制度です。
しかし、実態は、少子高齢化が進む日本社会で人手不足を補う制度として機能し、賃金の未払いやハラスメントが相次ぎ、問題視されてきました。

技能実習制度の問題点:

人権侵害と労働環境の悪化:

 技能実習制度は、外国人労働者にとって過酷で不安定な労働環境を生み出してきました。賃金未払いや職場でのハラスメント、暴力などが頻発し、「奴隷制度」とまで非難され、人権侵害が深刻な問題となっていました。

制度の逸脱と実態の不一致:

 技能実習制度は、本来は発展途上国への技術移転を目的としていましたが、実際には労働力確保の手段として機能していました。これが制度の本来の理念と実態の不一致を招いています。

転籍の制限と職場問題:

 技能実習生が職場での問題に直面した場合、転籍が難しく、賃金未払いや労働条件の改善が見込めないまま就労を続けざるを得ない状況が発生していました。

新制度「育成就労」の内容とメリット:

目的の明確化:

 新制度は、技能実習制度からの脱却を図り、「人材確保・育成」を明確な目的として掲げています。これにより、外国人労働者が即戦力として育成され、中長期的な就労が促進されることが期待されます。

転籍の柔軟性と条件の見直し:

 新制度では、転籍が同じ業務分野で1年以上の就労があれば原則可能とされ、制限期間についても柔軟な対応が可能となりました。これにより、労働者が職場の問題に柔軟かつ適切に対処できる環境が整うでしょう。

能力基準の強化:

 育成就労では、転籍に必要な条件として、日本語能力試験「N5」 レベルと技能検定の合格が要件となります。また、特定技能への移行には、一定の技能と「N4」 レベルの日本語試験の合格が求められます。これにより、労働者のスキル向上が期待されます。

指導・監督の強化と人権保護の強化:

 受け入れ先の指導・監督を担う監理団体の要件が厳格化され、外国人技能実習機構も機能強化されます。これにより、労働者の人権保護が向上し、悪質な業者の排除が進むことが期待されます。

支援体制の充実:

 新制度では、多くの実習生が来日時に借金を抱える問題に対処するため、受け入れ先が一定程度、負担する仕組みも提唱されています。これにより、実習生の経済的な負担が軽減され、安定した労働環境が整うでしょう。

まとめ:

 新制度「育成就労」は、技能実習制度の問題点を改善し、人材確保・育成を目的とした制度です。新制度の導入により、技能実習制度が本来の目的を達成し、実習生の人権が守られるようになることが期待されます。
しかし、新制度が実際にどのように運用されるかは、今後の法令の整備や制度の運用次第です。新制度が理念を形骸化させないためにも、政府や関係機関は、実効性のある制度設計と運用に努める必要があります。

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Posted by Ka Shiba