人工衛星で広範囲な農地利用を一気にチェックし、自治体の負担を大幅に削減へ
従来、自治体は田畑の作付け状況を確認するために職員を派遣し、現地で目視での確認作業を行っていました。しかし、これは非常に手間がかかり、山間地などへのアクセスが難しい場合もあり、作業には多大な時間とリスクが伴っていました。この課題に対処するため、人工衛星を活用した農地利用のチェックが進められています。
◎業務委託で自治体の負担を大幅に削減
愛知県豊田市では、2022年度から実証実験を経て本格的に衛星データ利用を導入しました。具体的な取り組みとして、一般財団法人「リモート・センシング技術センター」に業務委託し、合成開口レーダー(SAR)衛星と光学衛星で撮影した画像を活用しています。これにより、夜間や曇天でも観測が可能なため、従来の目視確認よりも広範囲での農地利用チェックが可能になりました。
新たに導入されたシステムでは、職員はタブレットを使用して衛星画像を取り込み、地図データ上で判定結果を閲覧できます。衛星データから得られる情報に基づき、田や畑に「要調査」の印を付けることができます。そして、この「要調査」の印のついた農地だけを対象に、実際に現地での目視確認を行う仕組みが構築されています。この段階で、衛星では分からない細かい状況や特殊な事例に対応することが可能です。
◎全国自治体で活用できるモデルを目指す
これにより、自治体の交付金を巡る業務において大きな効率化が図られています。例えば、豊田市では、23年度において延べ約3万筆のうち7割以上の農地が衛星データによる判定で省略できたと報告されています。作業日数の大幅な削減が実現され、これによって人的リソースの有効活用が可能となりました。
また、山口県宇部市でも同様の取り組みが進んでおり、リモート・センシング技術センターは将来的にはこのモデルを全国の自治体で活用できるようにし、コストを下げることを目指しています。このような衛星データを利用した業務効率化は、地域の過疎化や高齢化による課題に対処するための重要な手段として期待されています。
◎まとめ
人工衛星を使った農地利用のチェックは、従来の現地確認作業に比べて大幅な効率化を実現しています。衛星データを活用することで、広範囲での農地チェックが可能となり、自治体の負担が軽減されています。これによって、地域の農地を維持管理し、環境保全などの機能を損なわれるリスクを低減させるとともに、効率的な資源配分が促進されています。将来的には全国規模での展開が期待され、衛星データを利用したモデルが他の分野においても応用される可能性が広がっています。
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