鳥取県が「オリジネーター・プロファイル」実証事業に参画、ネット上の「偽情報」対策を導入

 近年、インターネット上における「偽情報」や「誤情報」の拡散は深刻な社会問題となっています。特に災害時など、正確な情報が人命に関わる状況においては、「偽情報」の流布は混乱を招き、救助活動や避難行動に深刻な影響を及ぼしかねません。

このような状況を踏まえ、鳥取県がインターネット上の情報に対する信頼性向上を目指し、「オリジネーター・プロファイル(OP)」技術の実証事業に参画することを発表しました。

オリジネーター・プロファイル(OP)技術

 オリジネーター・プロファイル(OP)技術は、インターネット上の情報の発信元を明確にし、情報の信頼性を高めるためのデジタル技術です。具体的には、記事や広告などのコンテンツに対して、第三者機関が認証した発信者情報を電子的に付与します。これにより、情報の閲覧者は、その情報が誰によって発信されたのか、改ざんされていないかなどを容易に確認することができます。

 従来のインターネット環境では、情報の出所を特定することが困難な場合が多く、匿名性や改ざんのリスクが情報の信頼性を大きく損なっていました。OP技術は、このような課題を解決するために開発されました。この技術を用いることで、情報の発信者は自身の身元を明確にすることで責任を負い、情報の受け手は安心して情報を受け取ることができるようになります。OP技術は単に発信者情報を提供するだけでなく、情報が改ざんされていないことを証明する機能も備えているため、情報の真正性を担保する上で非常に有効な手段と言えるでしょう。

鳥取県がOP実証事業に参加

 鳥取県がOP実証事業に参加する最大の目的は、県民への情報提供における信頼性を向上させることにあります。特に災害時には、正確かつ迅速な情報伝達が不可欠であり、「偽情報」や「誤情報」の拡散は人命に関わる重大な問題を引き起こす可能性があります。能登半島地震における虚偽の救助要請の事例からも明らかなように、SNS等を通じて拡散される不確かな情報が混乱を招き、救助活動の妨げになることもあります。

 このような状況を踏まえ、鳥取県は県ホームページで発信する情報、特に災害・防災情報において、OP技術を活用することで情報の信頼性を確保し、県民が安心して情報を活用できる環境を整備しようとしています。具体的には、県ホームページのテスト環境において、災害情報などの記事を発信する際に「OP情報」を付与する仕組みを構築し、情報が間違いなく鳥取県から発信され、改ざんなどが行われていないことを「OP情報」によって確認できる仕組みを実証します。

 鳥取県がOP技術の導入に踏み切った背景には、総務省が推進する「インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証事業」の影響もあります。この事業は、インターネット上における「偽情報」や「誤情報」への対策技術の開発・実証を目的としており、OP技術研究組合が実施する実証事業もその一環として採択されています。鳥取県はこの事業に賛同し、OP技術研究組合に協力を要請することで、今回の実証事業への参加が実現しました。

 鳥取県は今回の実証事業を通じて、災害・防災情報の発信におけるOP技術の有効性を検証するとともに、将来的には福祉や生活環境など、他の分野への展開も視野に入れています。

事業を実施するOP技術研究組合の展望

 OP技術研究組合は、今回の鳥取県との実証事業を通じて、OP技術の普及と実用化に向けた重要な一歩を踏み出します。行政機関によるOP技術の実証は全国初の試みであり、この事業を通じて得られる知見は、他の自治体や公共機関におけるOP技術の導入を促進する上で、貴重なデータとなるでしょう。

 OP技術研究組合は、今回の実証事業を通じて、技術的な課題や運用上の課題を洗い出し、OP技術の改善に繋げていくことを目指しています。また、鳥取県との連携を通じて、行政機関がOP技術を導入する際の具体的な手順や留意点などを明確化し、他の自治体への導入を支援するための体制を整備していくことも重要な課題となります。

 さらに、OP技術研究組合は、OP技術の普及を通じて、インターネット空間における情報の信頼性向上に貢献していくことを目指しています。そのためには、技術開発だけでなく、OP技術の認知度向上や普及啓発活動も積極的に展開していく必要があります。

まとめ

 今回の鳥取県の取り組みは、インターネット上の情報に対する信頼性向上に向けた重要な試みと言えるでしょう。OP技術が広く普及することで、「偽情報」や「誤情報」に惑わされることなく、安心してインターネットを利用できる社会の実現が期待されます。

<言意>

OPの主な特徴は次のとおりです。
(1)発信者の実在性と信頼性を確認できる
(2)情報が改ざんされていないことを確認できる
(3)ブランドセーフティリスクの軽減やアドフラウドの排除に役立つ
(4)市場における透明性を向上させることができる
OPは、インターネットに関する仕様の国際標準化団体であるW3Cに技術提案されており、主要ブラウザに標準機能として搭載されることを目指しています。