島根大病院により県内で初めて実施された「光免疫療法」について

島根大学医学部付属病院(出雲市塩冶町)は2月4日、頭頸部がんの最新治療である「光免疫療法(アルミノックス治療)」を県内で初めて実施しました。
治療が行われたのは、上顎(じょうがく)がんになった県内在住の70代女性で、抗がん剤と放射線治療で腫瘍は縮小したが根治に至らず、今回の新しい治療「光免疫療法」に踏み切ったようです。
この治療法は、光に反応する薬剤を投与し、レーザー光線を照射することでがん細胞を死滅させるもので、「がん」の根治が期待されています。
◎頭頸部がんの種類は?
頭頸(とうけい)部がんとは、口や首、鼻、喉などに発生し、脳と目を除いた首から上までの領域に発生する「がん」の総称です。
その種類は多岐にわたり、主に以下のものが挙げられます。
- 口腔がん
舌がん、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がん、口蓋がんなど - 咽頭がん
上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんなど - 喉頭がん
声門がん、声門上がん、声門下がんなど - 鼻腔がん、副鼻腔がん
上顎がん、篩骨がん、前頭がん、蝶形がんなど - 唾液腺がん
耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど
◎頭頸部がんの主な治療法は?
頭頸部がんの治療法は、「がん」の種類や進行度、患者の状態などによって異なりますが、主なものとしては以下のものが挙げられます。
- 手術
外科的にがんを切除する方法 - 放射線治療
放射線を照射してがん細胞を破壊する方法 - 薬物療法
抗がん剤や分子標的薬などを用いてがん細胞を攻撃する方法 - 光免疫療法
光に反応する薬剤とレーザー光線を用いてがん細胞を破壊する方法
◎光免疫療法(アルミノックス治療)とは?
光免疫療法(アルミノックス治療)は、2021年に保険適用となった新しい治療法です。この治療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体に、光に反応する物質(アルミノックス)を結合させた薬剤を使用します。この薬剤を患者に投与した後、レーザー光線を照射することで、アルミノックスが活性化し、がん細胞を破壊するという仕組みです。
◎光免疫療法(アルミノックス治療)の仕組みは?
- 薬剤投与
光感受性物質(アルミノックス)を結合させた抗がん剤を点滴投与します。 - 薬剤蓄積
薬剤ががん細胞に集積するまで待ちます(約1日)。 - レーザー照射
がん細胞にレーザー光を照射し、薬剤を活性化させます。 - 細胞破壊
活性化した薬剤ががん細胞の細胞膜を破壊し、がん細胞を死滅させます。
◎光免疫療法(アルミノックス治療)の対象は?
光免疫療法(アルミノックス治療)は、以下の条件を満たす患者の方が対象となります。
- 切除不能な局所進行の頭頸部がん
- 従来の治療法(手術、放射線治療、薬物療法など)を受けた上で、再発した頭頸部がん
従来のがん治療法が受けられない場合や、効果がなかった場合に適用されます。
◎光免疫療法(アルミノックス治療)の治療の流れは?
- 検査・診断
治療の適格性を評価するための検査を行います。 - 治療計画
治療スケジュールや照射方法などを決定します。 - 薬剤投与
光感受性物質を結合させた抗がん剤を点滴投与します。 - レーザー照射
レーザー光線を照射し、がん細胞を破壊します。 - 経過観察
治療後の状態を観察し、副作用の管理を行います。
◎まとめ
光免疫療法(アルミノックス治療)は、従来の治療法で効果が得られなかった頭頸部がん患者の方にとって、新たな選択肢となる可能性を秘めています。特に、手術で発声や食べ物を噛み砕く機能に影響が出る可能性がある患者の方にとっては、QOL(生活の質)を維持しながら治療を進めることができるという点で大きなメリットがあります。
しかし、この治療法はまだ新しいものであり、長期的な効果や安全性についてはさらなる研究が必要です。また、すべての頭頸部がん患者の方が対象となるわけではありません。治療を検討する際には、必ず専門医に相談し、自身の状況に合った治療法を選択することが重要になります。
2021年から日本頭頸部外科学会が認める医療機関で実施可能となり、23年からは歯科口腔外科でも適用とななりました。現在、国内の約170カ所で行われ、山陰両県では、鳥取大医学部付属病院(米子市西町)が22年に始めています。島根大医学部附属病院(出雲市塩冶町)が県内で初めて光免疫療法を実施したことは、頭頸部がん治療の進歩において大きな一歩となります。
今後、この治療法がさらに普及し、多くの患者の方にとって希望をもたらす治療法になることが期待されます。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません