農家への転作交付金で不正需給が134億円ってほんと…?
農林水産省が行っている転作交付金(水田活用の直接支払交付金)は、主食用米から麦や大豆、飼料用米などの生産に転換する農家に国が支給する交付金です。
この交付金は、主食用米の過剰生産の抑制や、多様な農業生産の確保などの目的で、1990年に創設されました。
2023年10月23日、会計検査院は、2020年度と2021年度の転作交付金について調査した結果、約134億5千万円分の交付で不適切な取り扱いがあったと発表しました。
具体的には、以下の2つのケースが指摘されています。
- 対象水田稲作に別の補助金で建てられたビニールハウスなどの園芸施設があり、作付けが事実上困難なのに交付金が支給されていた(交付金額計約7千万円)
- 農家提出の書類に収量が記載されておらず、生産実績を把握しないまま交付金が払われていた(同計約90億4千万円)
これらの不適切な支給は、転作交付金の制度運用に問題があることを示しています。
◎不適切な支給の実情
1つ目のケースでは、
園芸施設の設置などにより、転作作物の生産が困難な水田について、農家が虚偽の営農計画書を提出し、交付金を不正に受給していた。
このケースでは、農政事務所の担当者が、営農計画書の審査や現地調査を十分に行っていなかったことが原因と考えられます。
2つ目のケースでは、
農家が収量を記載した書類を提出せず、交付金が支給されていた。
このケースでは、農政事務所の担当者が、農家からの収量報告を十分に確認していなかったことが原因と考えられます。
◎不適切な支給の原因
これらの不適切な支給の原因として、以下の2点が挙げられます。
- 制度運用の不備
転作交付金の制度は、農家による自主申告に基づいて交付金額を算定しています。そのため、農家が虚偽の申告を行った場合、制度の運用上、それを防ぎづらい構造になっています。
また、農政事務所の担当者の人員や予算が限られていることも、制度運用の不備につながっていると考えられます。
- 農家のモラルハザード
農業経営の厳しさから、転作交付金の不正受給に手を染める農家がいることも、不適切な支給の原因となっていると考えられます。
◎今後の対処方法
これらの不適切な支給を防止するためには、以下の対策が必要です。
- 制度運用の見直し
農家による虚偽の申告を防ぐため、営農計画書の審査や現地調査を強化する必要があります。
また、収量報告の提出を義務付けるなど、生産実績の把握を徹底する必要があります。
- 農政事務所の体制強化
農政事務所の担当者の人員や予算を増やし、制度運用の強化を図る必要があります。また、農家への啓発活動を強化し、不正受給の防止を図る必要があります。
まとめ
転作交付金は、日本の農業政策において重要な役割を果たしています。
しかし、今回の会計検査院の調査結果は、制度運用に問題があることを明らかにしました。
今後、制度運用の見直しや農政事務所の体制強化などの対策を講じ、不適切な支給を防止し、転作交付金の適正な運用を図ることが重要であると思います。
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