沈黙の病気「歯周病」が招く、もう一つの恐怖:大腸がんとの意外な関係
日本人にとって最も身近な病気の一つである「歯周病」。歯茎の腫れや出血、口臭など、自覚症状が乏しいことから「沈黙の病気」とも呼ばれ、放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも深刻な影響を与えることが明らかになってきました。
近年、特に注目を集めているのが、歯周病と大腸がんとの関係です。横浜市立大学の研究チームによる画期的な研究によって、歯周病菌の一種「フソバクテリウム・ヌクレアタム」が、大腸がんの発症や悪化に関与している可能性が示されました。
●歯周病菌が体内に侵入するルート
- 歯周ポケットに潜む歯周病菌が、歯磨きなどで取り除かれずに増殖。
- 血液やリンパ液を通じて全身に運ばれる。
- 大腸に到達し、炎症を引き起こし、大腸がんの発生・悪化を促進する。
●歯周菌が体内に与える悪影響
1. 炎症を促進し、免疫機能を低下させる
歯周病菌は、炎症を引き起こす物質を産生し、歯茎だけでなく全身に炎症を招きます。慢性的な炎症は、免疫機能を低下させ、大腸がんを含む様々な病気のリスクを高めると考えられています。
2. DNAを損傷し、細胞のがん化を促進する
歯周病菌は、細胞のDNAを損傷する物質を産生します。DNA損傷は、細胞のがん化を促進する要因の一つであり、大腸がんの発症リスクを高めると考えられています。
3. 腸内環境を悪化させる
歯周病菌が腸内に侵入すると、腸内環境を悪化させ、大腸がんの発症リスクを高めると考えられています。
●歯周病と大腸がんの関係を裏付ける研究結果
横浜市立大学の研究チームは、歯周病患者とそうでない人々の便を比較したところ、歯周病患者の方がフソバクテリウム・ヌクレアタムの数が有意に多かったことを発見しました。さらに、大腸がん患者のがん組織からも、フソバクテリウム・ヌクレアタムが検出されました。
これらの研究結果は、歯周病と大腸がんの間に密接な関係があることを示しており、歯周病の予防と治療が、大腸がんの予防にもつながる可能性を示しています。
●歯周菌の脅威:全身疾患への影響
歯周菌は、大腸がん以外にも、糖尿病や心臓病などの全身疾患のリスクを高めることが分かっています。
- 糖尿病: 歯周病は、インスリンの効きを悪くし、糖尿病を悪化させると考えられています。
- 心臓病: 歯周病菌が血流に入り込み、心臓病や脳梗塞などのリスクを高めると考えられています。
●歯周病予防と治療の重要性
歯周病は、適切なケアによって予防と治療が可能です。
○日々の予防
- 正しい歯磨き習慣:1日2回、2分以上、歯垢をしっかり落とす。
- 歯間ブラシやフロス:歯ブラシでは届かない歯間の汚れを除去する。
- 定期検診:歯科医院で定期的に歯垢や歯石を除去してもらう。
○症状が出ている場合
- 歯科医院で適切な治療を受ける:歯周ポケットの清掃、歯石除去、歯周外科手術など。
●まとめ
歯周病は、単なる歯の病気ではありません。全身の健康を守るためにも、口腔ケアを習慣化し、歯周病を予防・治療することが重要です。定期的な検診と適切なケアによって、歯周病リスクを減らし、大腸がんを含む様々な病気の予防に繋げましょう。
◎口腔ケアを習慣化し、全身の健康を守りましょう!
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