担い手不足を乗り越え、拡大する安来産イチゴ栽培
近年、全国的なイチゴ栽培面積が担い手不足などの影響で減少する中、山陰の産地・安来市は独自の新規就農支援制度を導入し、栽培面積の回復に成功しています。この制度は、U・Iターン就農者を増やし、安来産イチゴのブランド化と販路拡大に大きく貢献しています。
1. 新規就農を後押しする独自の支援制度
やすぎ地区本部や市、島根県が連携し2015年度に始めた支援制度は1年目は師匠に学び、2年目はJAの研修ハウスで栽培、 3年目に独立というステップを踏む。JAしまねやすぎ地区本部やすぎ苺(いちご)部会の高見部会長は「(栽培の)深い部分も経験できる制度だと思う」と説く。
紅ほっぺ、章姫(あきひめ)、かおり野の3品種を主体とする安来産の味も就農希望者を魅了する。大阪市から移り住んだ翠(みどり) さんは「田舎で農業をしたい」との漠然としたイメージが、農業イベントで知った安来を訪ね、イチゴを口にし「すごくおいしくて、自分も作りたいと思った」と振り返る。
2. 山陰のハンディを逆手にとった完熟栽培でブランド化
冬場の日照時間が短く、収穫量が伸びないという山陰のハンディを、安来産イチゴは逆手に取っています。じっくりと時間をかけて完熟収穫することで、糖度が高く、香り豊かなイチゴを栽培しているのです。
一般的なイチゴは、花が咲いてから30日程度で収穫し、流通過程で赤く色づきます。一方、安来産イチゴは50日程度かけて完熟させ、甘味を高めているのです。この完熟収穫によって、安来産イチゴは独特の風味と食感を持ち、高い評価を得ています。
3. 山陽や近畿からも引き合いのある「安来産イチゴ」、さらなる販路拡大に向けて
安来産イチゴは、その高品質で山陽や近畿地方からも引き合いがあります。しかし、山陰という立地から輸送コストや、完熟収穫のため日持ちが課題となっています。
そこで、さらなる販路拡大には、以下の取り組みが必要不可欠です。
- 出荷時期の拡大
ハウス栽培技術の導入により、冬場の出荷量を増やす - 輸送手段の工夫
鮮度を保ちながら長距離輸送できる方法を検討 - 販路開拓
オンラインショップや都市部のスーパーマーケットへの出荷 - 加工品の開発
ジャム・ゼリーやスイーツなど、加工品の開発と販売 - ブランドイメージの強化
イベントやSNSを通じて、安来産イチゴの認知度向上
まとめ
新規就農支援制度と完熟栽培という独自の強みを持つ安来産イチゴは、今後もさらなる成長が見込まれます。今後は、ブランド化と販路拡大に向けた戦略を積極的に実行していくことで、全国的に知名度を高め、西日本を代表するイチゴ産地へと発展していく可能性を秘めています。
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