犬を飼っている高齢者は、認知症のリスクが低くなるという研究結果が報告されました
認知症は、脳の神経細胞が変性・脱落することで、記憶力、判断力、理解力などの認知機能が低下する病気です。高齢者に多く発症し、世界中で大きな社会問題となっているようです。
認知症の原因は、アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの脳疾患、脳卒中などの脳血管障害、頭部外傷、栄養失調、慢性的な炎症、生活習慣病など、多岐にわたります。
近年、ペットの飼育と認知症のリスクとの関連に関する研究が進んでいるようで、その結果、犬を飼っている高齢者は、飼っていない人に比べて認知症の発症リスクが低いという研究結果が報告されています。
◎研究の概要
東京都健康長寿医療センターのチームは、2016年から2020年にかけて、65歳以上の男女1万1194人を対象とした研究を実施されたようです。
研究では、高齢者の認知機能の状態を、4年間にわたって追跡調査されました。その結果、犬を飼っている高齢者は、飼っていない人に比べて認知症の発症リスクが40%低かったことが明らかになったそうです。
さらに、犬を飼っている人のうち、運動習慣がある人や、社会的に孤立していない人の方が、発症リスクが低い傾向にあることも分かったようです。
◎研究結果の考察
犬を飼っている高齢者の認知症リスクが低い理由としては、以下の可能性が考えられます。
●犬との触れ合いによるストレス軽減
犬との触れ合いは、ストレスを軽減し、心身を健康に保つ効果があるといわれています。
ストレスは、認知症のリスクを高める要因の一つと考えられているため、犬との触れ合いが認知症リスクを低下させる一因となっている可能性があるようです。
●犬の世話による運動や社会活動の促進
犬の世話には、散歩や食事、排泄の処理など、一定の運動や社会活動が必要となります。
運動や社会活動は、認知症のリスクを低下させる効果があるといわれているため、犬の世話が認知症リスクを低下させる一因となっている可能性があるようです。
●犬の存在による心の充実
犬の存在は、高齢者の孤独感や孤立感を軽減し、心を充実させる効果があるといわれています。
孤独感や孤立感は、認知症のリスクを高める要因と考えられているため、犬の存在が認知症リスクを低下させる一因となっている可能性があるようです。
◎今後の研究課題
今回の研究では、犬を飼っている高齢者と飼っていない高齢者の間で、認知症のリスクに差が見られることが明らかになったと報告されています。
しかし、その差が本当に犬の飼育によるものなのか、あるいは他の要因によるものなのかについては、さらなる研究が必要なのかも知れません。
具体的には、以下の点について検討する必要があるように思います。
- 犬との触れ合いや犬の世話の量と認知症リスクとの関連
犬との触れ合いや犬の世話の量が、認知症リスクにどの程度影響を与えるのかを検討する必要があります。
- 犬の種類や性格と認知症リスクとの関連
犬の種類や性格によって、認知症リスクに差があるのか、検討する必要があります。
- 他のペット飼育と認知症リスクとの関連
今回の研究で、猫の場合は飼育の有無で発症リスクに差はなかったと報告されています。
この場合の、犬の飼育率は8.6%、 猫の飼育率は6.3%だったそうです。
犬や猫以外のペット飼育と認知症リスクとの関連も検討されるといいかもしれません。
まとめ
今回の研究結果は、犬の飼育が認知症の予防に有効な手段となる可能性を示唆するものであります。
今後の研究で、その有効性がさらに明らかになれば、認知症の予防や治療に新たな選択肢を提供するものとなるだけに、大いに期待したいものです。
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