「同一労働は同一賃金を支払う」なぜ当たり前のことが行われないのか?…制度見直しと課題

2025年2月14日

 厚生労働省が、正社員と非正規労働者の待遇格差を是正する「同一労働同一賃金」の徹底を目指し、制度見直しの検討を開始しました。

①パート・有期労働者や派遣労働者の同一労働同一賃金。
②労働者の待遇に関する説明義務といったパート・有期労働法や労働者派遣法の規定。
⓷同一労働同一賃金ガイドライン、正社員転換など非正規労働者への支援。
を論点として検討を進めることになります。

この動きは、パートタイム・有期雇用労働法の関連規定の施行から5年が経過したことを受けたものであり、日本の労働市場における不平等を解消するための重要な一歩となることが期待されます。

均等待遇と均衡待遇

同一労働同一賃金」とは

 パートや派遣などの非正規労働者と正社員の間で、仕事の内容や責任が同じであれば同じ待遇を、仕事内容や責任が異なっていても不合理な格差を認めないという考え方です。

これは、「均等待遇」と「均衡待遇」という二つの側面から構成されています。

  • 均等待遇
     仕事の内容や責任が同じであれば、雇用形態に関わらず同じ待遇とする。
  • 均衡待遇
     仕事の内容や責任が異なる場合でも、不合理な格差を認めず、バランスの取れた待遇とする。

この原則は、パートタイム・有期雇用労働法などで規定されており、企業は労働者から待遇差について説明を求められた場合、応じる義務があります。

制度見直しの背景と課題

 2020年に大企業、2021年に中小企業に対して同一労働同一賃金が適用されたが、厚生労働省の企業向け指針では基本給や賞与の不合理な格差の具体例などが示されているものの、罰則はありません。

そのため、いかに徹底させるかが大きな課題となっているのです。

労働政策審議会の部会では、

 労働者側が依然として待遇格差が大きく、同一労働同一賃金が「十分に達成されていない」と主張。

 一方、企業側は格差は縮小傾向にあるとし、見直すなら経営環境の厳しい中小企業に配慮するよう求めている。

 政府は2024年6月に閣議決定した「骨太方針」で「さらなる徹底を進める」と明記しており、施行後5年での見直し検討は関連法の付則で定められている。

今後は、規定や指針の検証に加え、非正規労働者の支援策も議論される予定です。

制度見直しへの期待と提言

 今回の制度見直しは、同一労働同一賃金の徹底に向けた重要な機会となります。しかし、現状のままでは十分な効果が期待できません。

以下に、制度見直しに向けての提言を述べさせていただきます。

  1. 格差基準の明確化と罰則の導入
     同一労働同一賃金の徹底には、具体的な格差基準を明確化し、違反に対する罰則を導入することが不可欠です。「同一労働同一賃金」という当たり前のことがなされていない現状では、格差基準を設けてそれに対しての罰則を設定しないと一向に改善されないと考えます。
  2. 労働者への支援強化
     
    労働者が待遇差について説明を求めた場合、企業は応じる義務があります。非正規労働者が自身の権利を理解し、企業に対して適切な待遇を求めることができるよう、相談窓口の拡充や情報提供の強化など、労働者への支援策を充実させる必要があります。
  3. 企業への啓発と指導
     企業に対して、同一労働同一賃金の重要性や具体的な対応策について、より一層の啓発と指導を行う必要があります。特に中小企業に対しては、経営状況に配慮した支援策を講じながら、制度の理解と遵守を促すことが重要であると思います。
  4. 労使間の対話促進
     同一労働同一賃金の実現には、労使間の建設的な対話が不可欠です。企業は労働者の意見に耳を傾け、透明性のある形で待遇決定プロセスを進めるべきだと思います。

まとめ

 「同一労働は同一賃金を支払う」という当たり前のことが、いまだに徹底されていない現状は、日本の労働市場における大きな課題であります。今回の制度見直しを機に、政府、企業、労働者が一体となってこの問題に取り組み、誰もが納得できる公正な労働環境を実現することを強く望みます。