なぜ出雲市は、全国都市ランキングで評価が高いのか!

2023年7月25日

少子高齢化が進む人口減少時代、日本全体が活力を保ち続けるためには、各都市が独自の特性を活かしながら、人や企業を惹きつける「磁力」と、魅力や強みを継続的に発揮し続ける「発展性」を維持することが不可欠だと言われています。

そのような中で、出雲市の何が、どう人を引きつけているのか。 その成長と活性化の背景とともに、出雲市の魅力を探ってみました。

【児童の増加で教室が足りない】

出雲市立高松小学校は児童数の右肩上がりに対応するため、2022年度にパソコン教室を普通教室に改修し、23年度以降は増築して現在の22教室から26教室になる。
18年度には607人の児童だった同校は、22年度には676人となり、県内で6位にランクイン。市教育委員会の推計では、26年度には764人に増加する見込みで、校長はこのスピードでの増加に驚きを隠さなかったとのことです。

【旧市郊外の新たな宅地開発で若い世代が増加】

松江市と出雲市は県内小学校の児童数トップ10校を5校ずつ分け合う。
22年度の児童数では、出雲市立高松小学校は最大の伸び(1・4%増)で676人となっており、地域の若い世代の増加が児童数増加の要因となっています。
旧市郊外だった高松地区は旧出雲市と旧大社町に接し、かつては田園地帯だったそうで、最近では宅地開発が進み、住宅やアパートが建ち並ぶ地区となっています。
この地区は農地から転じて宅地となり、子育て世代の定住地として人気を集め、地区の世帯数は増加しており、市全体の人口割合を上回る58%が40代以下の若い世代だと言うことです。

【地価が安く、商業施設も増えて街の姿が変わる】

出雲市では開発区域と抑制区域を分ける「線引き制度」がないため、農地転用が進んでいます。これにより、地価が安くなっており、大手企業が新たな出店地として出雲市を選ぶケースが年々増えています。
地価公示では、出雲市の地価が線引き制度がある松江市よりも安く、安価な土地が大型ショッピングモールや小売りと飲食などの大手チェーンの出店を引き寄せている状況です。

【雇用の受け皿と外国人労働者の増加】

出雲市の雇用の受け皿となっている主力産業は製造業であり、特に村田製作所が主要な雇用企業となっています。この企業は外国人労働者として主にブラジル人を雇用しており、約2200人が働いています。
他にもパソコン製造の島根富士通、産業用ロボット製造のスター精機出雲工場、医療機器製造の島根島津の大手3社が相次いで進出しています。
出雲市の外国人人口は、安定した雇用の場があるために増加しており、定住政策や異文化理解のセミナーなども実施されています。

【まちづくりの効果】

出雲市の中心部を東西に貫く「大動脈」だった旧国道9 号の交通渋滞緩和のため、地区内に整備された国道9号出雲バイパスに沿って、企業の出店や宅地開発が進んでいます。
出雲市では、市の戦略的なまちづくり手法として開発区域と抑制区域を分ける「線引き制度」がないため、農地転用が進んでいると思われます。
その結果、地価の高い旧市街地よりも地価が安く、企業の出店と一戸建てやアパートが建ち並び、若い世代の定住地として人気を集めています。
特に出雲市立高松小学校の児童数増加は、地域の宅地開発や商業施設の進展によって引き起こされたと言えます。

【市の成長と街の活気づけ】

出雲市は近年、他の山陰両県の中でも唯一人口が増加しており、合併前の旧斐川町や旧市の誘致活動による製造業の拡大が寄与しています。
出雲市内の製造業は島根県内で最多の1万4852人が働いており、そのうち約7割が出雲市内在住です。
製造業の拡大により、出雲村田製作所を始めとする大手企業が多数進出し、外国人労働者も増加しています。
特にブラジル人の定住政策や異文化理解の取り組みが行われ、彼らの受け入れによって市の活気が思った以上に増しているとのこと。

【外国人や若い世代の定着】

「雇用の受け皿」として規模の大きい製造業の誘致はさらに、外国人の定住者増加と言う「予想外」の結果をもたらしたそうです。
出雲市への出稼ぎから定住へと動きの変化が見られるようになったようで、家族を呼び寄せたり、新たな出会いから家庭を築いたりする例が増えているそうです。
安定した雇用の場を提供する製造業の存在が、外国人や若い世代の定着につながっています。
旧市郊外の高松地区は土地の安さや地域の魅力によって、出雲市内や市外から人々が移り住む場所として選ばれているようです。

【成長と課題】

出雲市の人口増加と活気のあるまちづくりは、企業の誘致や若い世代の定着によって成し遂げられました。
しかしながら、児童増加に伴い教育施設や都市インフラの整備がますます必要になって来ますし、今後は製造業以外の有力企業を如何に誘致するのかが課題になってくると思います。
市は今後も定住政策や外国人労働者の受け入れなど、多様な雇用の場を創出することで、今以上に持続的な成長と活気あるまちづくりを進めていくことが重要だと思います。

●2023年 中国地方 都市特性評価ランキング上位

全国順位中国地方摘要
14位(13)広島市政令指定都市
28位(22)岡山市政令指定都市
37位(37)出雲市17万以上都市
50位(53)倉敷市17万以上都市
51位(49)東広島市17万以上都市
54位(60)鳥取市県庁所在地
57位(55)松江市県庁所在地
62位(64)山口市県庁所在地
( )内は2022年順位

1.全国順位は、主要136都市(東京23区を除く)で全国の政令指定都市と県庁所在地、人口17万人以上の都市。
2.中国5県では11市がランクの対象となっています。
(注) 森ビル系のシンクタンクで森記念財団・都市戦略研究所(東京・港区)が、経済や住みやすさなど都市を多角的に分析調査した「日本の都市特性評価」の2023年版をまとめたもの。

●山陰地方で首位は出雲市(37位)

出雲市は「生活・居住」が全国2位、「環境」が全国3位と高いスコアだった。合計特殊出生率や住宅の広さが全国1位だった。

【まとめ】

中海・宍道湖・大山圏域の発展のために

出雲市では、製造業の誘致が雇用の受け皿となり、地域の成長と活気を支える存在となっています。特に旧市郊外の農地を転用した安価で広い土地と多様な雇用の場が若い世代の定着を促進しており、児童数増加などの成果を上げています。

山陰地方で中海・宍道湖・大山圏域の発展のためには、その圏域の各市で出雲市のように、その場凌ぎではなく、先を見据えた地域計画と施工を行わない限り20〜30年後には、多額の予算を使用した割には、ほとんど効果のない結果になり得ます。
中海・宍道湖・大山圏域の発展のために、各市それぞれに合った多様な取り組みを行い、持続可能な成長と活気ある街づくりを進めていくことが重要であり、各市と圏域の今後の活躍を期待したいと思います。

(補足)このブログの情報は、一部を山陰中央新報さんの記事を参考にさせていただきました。

地域活性化

Posted by Ka Shiba