日光浴とビタミンDが教えてくれる、私たち自身の「防衛力」

先日、ビタミンDが風邪やインフルエンザ、さらには新型コロナウイルス感染症の予防にも関わっているという文章を読む機会がありました。正直なところ、これまでビタミンDと聞いても「骨を強くする栄養素」くらいの、ぼんやりとした知識しかありませんでした。
しかし、2010年に東京慈恵会医科大学の浦島教授が行った研究の記事を読んで、その認識は大きく変わりました。ビタミンDは、私たちが本来持っている「免疫機能」という名の防衛力を直接的にサポートする、非常に重要なパートナーだったのです。一人の国民として、そして日々の健康を願う一人の人間として、この発見は大きな衝撃であり、希望でもありました。
◎科学的根拠が示す「ビタミンD」の実力
この記事で紹介されている研究結果は、どれも非常に興味深く、説得力がありました。特に、2010年に行われた日本の子供たちを対象とした研究には、心を動かされました。ビタミンDを摂取したグループは、しなかったグループに比べてインフルエンザの発症が著しく低下したという結果は、子を持つ親世代はもちろん、社会全体にとって朗報です。ハーバード大学からも称賛されたという事実は、この研究の信頼性の高さを物語っており、「ビタミンD、すごいじゃないか」と素直に感動しました。
さらに、2017年の1万人以上を対象とした国際的な研究では、ビタミンDサプリメントが急性気道感染症のリスクを2割も低減させ、特にビタミンD不足の人に至っては7割も予防するという結果が示されています。この「7割」という数字は衝撃的です。現代社会を生きる私たちは、自分も含め、どれだけの人が「ビタミンD不足」に該当するのでしょうか。オフィスでのデスクワークが中心で、日中はほとんど太陽の光を浴びることがない。休日も、つい室内で過ごしてしまう。そんな生活を送っている人は、決して少なくないはずです。もしかしたら、毎年のように風邪をひいてしまうのは、単に「運が悪かった」のではなく、ビタミンD不足によって免疫機能が本来の力を発揮できていなかったからなのかもしれない。そう考えると、これまでの体調不良の原因が、少し違った角度から見えてくるような気がします。
そして、私たちの記憶に新しい新型コロナウイルス感染症との関連性です。ヨーロッパ20か国のデータで、血液中のビタミンD濃度が高い国ほど、感染者や死亡率が低い傾向にあったという報告は、この未知のウイルスとの闘いにおいて、一つの光明を示してくれたように感じます。もちろん、これが全てではないでしょう。しかし、ワクチンや治療薬といった外的なアプローチだけでなく、私たち自身の体内に備わった免疫システムを正常に働かせることが、いかに重要であるかを再認識させてくれます。
冬になると日照時間が短くなり、それに伴って私たちの血中ビタミンD濃度も低下する。そして、その時期にインフルエンザなどが流行しやすくなる。この事実と研究結果が結びついたとき、これまで当たり前だと思っていた季節性の感染症の流行が、実はビタミンDという具体的な要因と深く関わっている可能性が見えてきます。これは、私たちにとって非常に重要な「気づき」ではないでしょうか。
◎ビタミンDとどう向き合うか?
では、この重要なビタミンDを、私たちはどうやって日々の生活に取り入れていけば良いのでしょうか。いくつか方法が考えられますが、それぞれに現代人ならではの課題もあるように思います。
①まず、最も自然で効率的な方法は「日光浴」です。
太陽の光を浴びることで、私たちの皮膚はビタミンDを自ら作り出すことができます。これは人間が古来から持っている素晴らしい能力です。しかし、先ほども述べたように、現代のライフスタイルでは十分な日光浴の時間を確保するのが難しいのが現実です。夏場であれば、紫外線による皮膚へのダメージやシミ・そばかすを気にして、日焼け止めや日傘が欠かせません。冬場は、そもそも日照時間が短く、寒さもあって屋外で過ごす時間が減りがちです。環境省の「紫外線環境保健マニュアル」などを参考にすると、夏場の木陰で30分、冬場なら1時間程度の日光浴が一つの目安になるようですが、これを毎日続けるのはなかなかの努力が必要かもしれません。それでも、意識的に通勤時に一駅手前で降りて歩いてみる、昼休みに少しだけ外に出て散歩するなど、小さな工夫を積み重ねる価値は十分にありそうです。
②次に考えられるのが「食事」からの摂取です。
ビタミンDは、特に魚(サケ、サンマ、イワシなど)、きのこ類(特に天日干ししたもの)、卵などに多く含まれているそうです。こうしてみると、日本の伝統的な和食は、非常に理にかなった食事スタイルだということが分かります。しかし、食生活が多様化した現代において、毎日魚料理を食卓に並べるのは難しい家庭もあるでしょう。キノコ類は比較的取り入れやすいですが、それだけで十分な量を補うのは大変です。ここでも、意識的に食事のメニューを選ぶ、という日々の心がけが重要になってきます。
③そして、研究結果でもその有効性が示されていた「サプリメント」の活用です。
日光浴や食事だけでは不足しがちなビタミンDを、手軽に、そして確実に補うことができる現実的な選択肢と言えるでしょう。特に、日照時間の少ない冬の間や、多忙で生活が不規則になりがちな時期には、心強い味方になってくれるはずです。ただし、サプリメントはあくまで栄養補助食品です。頼りすぎるのではなく、基本は日光浴と食事であることを忘れてはいけません。また、何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、過剰摂取は健康被害につながる可能性もあるため、製品に記載されている目安量を守ることが大切です。
◎まとめ
今回、ビタミンDの重要性について知ったことは、私にとって、自分の健康との向き合い方を改めて考える大きなきっかけとなりました。「免疫力を高める」という言葉は、これまで漠然としていて、具体的に何をすれば良いのか分かりにくい部分がありました。しかし、「血中のビタミンD濃度を適切に保つ」という具体的な目標が見えたことで、日々の行動が明確になります。
それは、天気の良い日に少し散歩をしてみることかもしれません。今日の夕食に、焼き魚を選んでみることかもしれません。あるいは、冬の間だけ、お守りのようにビタミンDのサプリメントを摂ってみることかもしれません。一つ一つは小さな行動ですが、それが私たちの体を内側から支え、見えない感染症の脅威から守ってくれる「防衛力」につながっていく。そう考えると、日々の小さな選択が、未来の自分への大切な投資であるように思えてきます。
未来の健康への投資としてビタミンDを!
まずは私自身から、太陽の光を少しだけ意識して、明日からの生活を送ってみようと思います。
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