有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」とは?
PFAS(ピーファス)は、炭素とフッ素の結合を持つ化合物です。
炭素とフッ素の結合は非常に強固で、水や油、薬品に強く、耐久性があります。
そのため、コーティング剤、防汚剤、撥水剤、消火剤、テフロン加工など、さまざまな用途に使用されてきました。
日本では有機フッ素化合物として知られ、化学的に最も結合力の強い炭素-フッ素結合を持つ人工化合物の総称です。
現在、4700種類以上のPFASが特定されていますが、その中でも代表的なものとして、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の2つがあげられます。
PFOSとPFOAは、熱や薬品、紫外線にも強く、水と油の両方をはじくという特徴を持っており、私たちが日常的に使う多くのものに応用されています。
例えば、次のようなものにはPFOSかPFOAのどちらかが使われているとのことです。
- フッ素加工フライパン
- 防虫剤
- 撥水加工のされた雨具
- ハンバーガーなどの包装紙
- 崩れにくい化粧品
- 汚れを弾くソファやカーペット
生活用品のほかには、空港や軍事基地、石油コンビナートなどで使われる泡消火剤もあり、私たちの生活を便利なものにしてきました。
しかし実は、PFASが持つもう一つの性質「残留性と蓄積性」による影響が問題視され始めているのも事実で、環境汚染や人体への毒性など、様々な影響が懸念されているのです。
1.PFASの特徴
PFASの主な特徴は以下のとおりです。
- 水や油、薬品に強く、耐久性がある
- 熱や紫外線にも強い
- 生体への蓄積性がある
PFASは、水溶性と脂溶性の両方を持ちます。このため、水や油に広く分散し、あらゆる環境中に存在する可能性があります。
2.人体への侵入経路
PFASは、以下の経路で摂取または侵入する可能性があります。
- 水道水:PFASは、工場排水や米軍基地の泡消火剤の漏出などで土壌や水を汚染し、水道水に混入することがあります。
- 食品:PFASは、土壌や水を汚染した農作物や、PFASを含む包装材や容器に触れた食品から摂取する可能性があります。
- 空気:PFASは、工場や焼却炉などから空気中に排出され、呼吸によって吸入する可能性があります。
3.健康への影響
PFASは、以下の健康への影響が指摘されています。
- 発がん性:国際がん研究機関(IARC)は、PFASを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」物質に分類しています。
- 生殖毒性:PFASは、生殖能力や胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。
- 免疫毒性:PFASは、免疫機能に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。
- 内分泌かく乱作用:PFASは、ホルモンの働きを乱す可能性があると考えられています。
PFASは、自然界や体内で分解されにくく蓄積しやすい性質を持っており、「永遠に残る化学物質」とも呼ばれています。
また、水に溶けやすいという性質も持ち合わせているため、工場排水などによって周辺の地下水や水道水の汚染が問題となっています。
4.PFASへの規制
PFASは、世界各国で規制が強化されています。
日本では、2021年4月に特定化学物質の環境への排出及び飛散の規制に関する法律(PRTR法)の改正により、PFOSとPFOAの製造、輸入、使用が原則禁止されました。
そして、水道水中のPFASの基準値も設定されました。
またEUでは、2023年1月から、PFOSとPFOAを含む製品の販売が禁止されました。
まとめ、
PFAS(ピーファス)は、私たちの身の回りに広く使用されている化学物質です。
その一方で、健康への影響が懸念されていることから、世界各国で規制が強化されています。
今後も、PFASの安全性に関する研究が進められることが期待されています。
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