コロナの感染後に、心不全のリスクが高まる可能性あり

2023年12月25日

 2023年12月23日、理化学研究所などの研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染後、心臓に新型コロナウイルスが持続感染し、心不全のリスクが高まる可能性があることを、ヒトのiPS細胞を用いた実験で明らかにしました。

 研究チームは、ヒトのiPS細胞から心筋細胞や血管の細胞からなる「心臓マイクロ組織」を作製し、新型コロナウイルスを感染させて影響を調べたとのことです。

その結果、新型コロナウイルスを高濃度で感染させると、心筋細胞が壊死し、心臓の収縮力が低下したようです。一方、低い濃度で感染させると、一時的に収縮力は下がったが、次第に回復し、心筋細胞の構造も保たれていたようです。
しかし、4週間後も増殖可能な新型コロナウイルスが残っており、心臓の働きに影響せずに、持続感染が可能なことが示されました。

また、持続感染した心臓マイクロ組織に、心筋梗塞や狭心症に相当する低酸素状態のストレスを与えると、感染した組織は心機能が回復せず、心不全状態に陥ったようです。

研究チームは、これらの結果から、新型コロナウイルスが心臓に持続感染することで、心筋細胞の機能が低下し、心不全を引き起こす可能性があると推測しています。

なお、この研究は、2023年12月22日に国際科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

心不全とは

 心不全とは、心臓の働きが低下し、全身に十分な血液を送れなくなる病気です。症状としては、息切れ、動悸、倦怠感、むくみなどがあります。

心不全の原因としては、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や、肥満、喫煙、過度の飲酒、加齢などが挙げられます。

コロナ感染後の心不全リスクの増加

 これまでの研究でも、新型コロナウイルス感染症の感染後に心不全を発症するリスクが高まる可能性があることは指摘されていました。しかし、新型コロナウイルスが心臓に持続感染し、心不全のリスクを高めるという直接的な証拠はありませんでした。

今回の研究では、ヒトのiPS細胞を用いた実験で、新型コロナウイルスが心臓に持続感染し、心不全のリスクを高める可能性を初めて明らかにしました。

この研究結果は、新型コロナウイルス感染症の感染後に心不全を発症するリスクが高まることを裏付けるものであり、今後、心不全の新たなリスク因子として注目される可能性があります。

コロナ感染後の心不全リスクを下げるには

 コロナ感染後の心不全リスクを下げるためには、以下のことに気を付けることが重要です。

  • 感染予防を徹底する
  • 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をコントロールする
  • 健康的な生活習慣を心がける

また、新型コロナウイルス感染症の感染後に、息切れ、動悸、倦怠感、むくみなどの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

今後の課題

今回の研究では、新型コロナウイルスが心臓に持続感染するメカニズムや、心不全のリスクを高める具体的な因子については明らかにされていません。

今後の研究では、これらのメカニズムや因子を明らかにすることで、心不全の発症を予防するための新たな治療法の開発につながることが期待されています。

また、今回の研究は、ヒトのiPS細胞を用いた実験であり、ヒトへの直接的な適用には慎重な検討が必要です。今後、動物実験や臨床研究などを通じて、ヒトへの適用可能性を検討していく必要があると思います。

健康

Posted by Ka Shiba