南部町 vs 安来市、住宅リフォーム支援体制の比較

項目 | 鳥取県南部町 | 島根県安来市 |
耐震診断の費用補助 | 旧耐震住宅(1981年5月以前)対象に無料診断。1軒あたり20万円を町が全額負担。予算:40軒分(800万円)。 | 耐震診断補助制度はあるが、一軒あたり6万円で一部負担。予算規模・対象件数は非公開。制度の利用率も不明確。 |
リフォーム相談窓口 | 「なんぶ里山デザイン機構」に5月1日開設。断熱化・太陽光設置など含めたワンストップ型の相談対応と業者マッチングを実施。 | リフォーム関連の相談窓口はあるが、分野ごとに別部署。業者とのマッチング体制は不在。市民の認知度・利用率も低い。 |
体制の一元化 | 町役場の4課(総務課・町民生活課・建設課・未来を創る課)が連携し、補助金申請を一括受け付け。 | 補助制度は各課に分散し、住民が自ら調べて申請する必要がある。連携体制は限定的で、住民の負担感が大きい。 |
実行主体の明確性 | 津山町長が「職員訪問による相談体制構築」を表明。町長主導で、町民生活の質を向上させるビジョンとリーダーシップが明確。 | 担当課は存在するが、市長や市のトップからの明確なメッセージは見られない。課ごとの対応で政策の方向性が伝わりにくい。 |
空き家対策との連携 | 空き家活用を担う「なんぶ里山デザイン機構」がリフォーム相談も兼ねることで、空き家再生と住宅環境整備の相乗効果を意識した構成。 | 空き家バンク制度・解体補助などはあるが、リフォーム支援と一体化された運用はない。空き家活用率も低調。 |
市民利便性 | ワンストップ対応で「誰に・どこに相談すればいいか」が明確。高齢者や情報弱者にも配慮された設計。 | 制度はあるが、「結局、個人で調べて行動するしかない」という印象が強い。窓口や手続きに対する心理的・実務的ハードルが高い。 |
ビジョン・方向性の共有 | 「防災と暮らしやすさを両立する組織作り」を明言し、政策・予算・実務が連動。政策目的と施策が連動している。 | 各施策の狙いや成果が市民に十分共有されていない。断片的な制度が多く、「暮らしやすさ」につながる実感が薄い。 |
分析ポイント:なぜ南部町は成功しつつあるのか?
- 目的と手段が一致している
- 「防災と暮らしやすさ」という明確なビジョンのもと、無料診断や補助、相談体制などが連動。
- 組織の縦割りを超えた連携体制
- 複数課が連携し、補助金申請も一括受付。住民が迷わない。
- 実行力と現場意識
- 実際に職員が訪問して話を聞くという姿勢は、「制度がある」だけでなく「制度が届く」形に昇華している。
安来市が取り組むべき改善の方向性
- 相談窓口の一本化・見える化
- 耐震、断熱、空き家再生、リフォーム全般を一括で対応できる窓口の設置。
- 情報発信と手続きの簡素化
- 高齢者やネット非活用層にも届く情報提供、申請の手続き支援(代行も含む)。
- 横断的な体制構築
- 建設課・福祉課・総務課などの部門を連携させた「住宅政策チーム」の設置。
- 市長・行政トップの明確な旗振り
- 政策の意義と目的を市民に伝え、行政内部にも共通認識を持たせる。
◎まとめ
私が暮らす島根県安来市では、鳥取県南部町のような先進的な仕組みは、残念ながらまだ見られない。市として耐震診断やリフォーム支援に関する制度は存在するものの、手続きの煩雑さや情報提供の不足などから、市民がそれを積極的に利用できているとは言い難いのが現状である。
たとえば、安来市も耐震診断に関する補助制度を設けてはいるが、対象者や補助額の条件が分かりにくく、市のホームページを閲覧しても、制度の活用方法をすぐに理解できるようにはなっていない。また、相談窓口は存在するものの、個別案件への対応や業者とのマッチングまで行う体制はなく、住民は「どこに何を相談すればいいのか分からない」と感じている人が多い。特に高齢者世帯にとっては、自分で業者を探し、必要書類を準備して申請手続きを進めるという流れは、極めてハードルが高い。このような安来市の現状と南部町の取り組みを比べたとき、明らかに「温度差」と「実行力の差」が浮き彫りになる。南部町では、町長自らが「役場の職員が訪問して、悩みや不安を聞く仕組みをつくりたい」と明言し、住民の生活実感に即した政策展開を志向している。
今後、安来市に求められるのは、南部町のような住民目線の一元支援体制の構築であり、そのためには「窓口の明確化」「情報の見える化」「課をまたいだ組織的連携」などが急務である。さらに、市としても耐震化や断熱化といったリフォームを、単なる個人の選択ではなく、地域の持続可能性を支える重要な政策分野として位置づける必要がある。
南部町の先進的な取り組みは、安来市を含む多くの地方自治体にとって貴重なモデルケースとなり得る。市民としては、このような事例に学び、自分たちの地域でも同様の体制が構築されるよう、多くの住民が声を上げ、関心を持ち続けることが地域の発展に重要だと感じている。
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