特定技能実習生への「妊娠制限を指導」?…の問題から見えること

2024年1月26日

 2023年12月22日、共同通信が行ったアンケート調査で、特定技能実習生であるベトナム人女性8人が、母国の送り出し機関だけでなく、日本国内のサポート機関でも妊娠を制限する指導をされていたことが明らかになりました。

ベトナム母国の送り出し機関からは、妊娠すると就労ビザの更新が難しくなる、出産休暇や育児休暇を取得すると職場に戻るのが難しくなる、といった理由で、妊娠を控えるよう指導されていた。日本国内のサポート機関からは、避妊具の使用を勧められたり、妊娠すると罰金が科される可能性があると言われたりしたようです。

 この問題は、男女雇用機会均等法と特定技能制度の両方の観点から、重大な人権軽視の問題であると考えられます。

男女雇用機会均等法の観点

 男女雇用機会均等法は、男女に平等な雇用機会と待遇を保障することを目的とした法律です。この法律では、妊娠・出産を理由とする不当な取り扱いを禁止しており、これには、妊娠を理由とした解雇、雇止め、不利益な取扱いが含まれています。

特定技能実習生は、日本国内で労働する外国人労働者の一形態です。男女雇用機会均等法は、特定技能実習生にも適用されるため、妊娠・出産を理由とした不当な取り扱いは禁止されています。

今回の問題では、特定技能実習生が妊娠したことを理由に、就労ビザの更新や職場復帰が難しくなる可能性があると指導されていました。これは、男女雇用機会均等法に違反する不当な取り扱いであると考えられます。

特定技能制度の観点

 特定技能制度は、人手不足に対応するため、即戦力となる外国人労働者を受け入れるための制度です。この制度では、特定の産業分野において、一定の技能・知識・経験を有する外国人労働者を受け入れることができます。

特定技能制度の下では、特定技能1号と特定技能2号の2つの在留資格が設けられています。特定技能1号は、最長5年間の在留が認められ、特定技能2号は、熟練技能を有する外国人労働者に対して、配偶者と子どもの帯同が認められ、事実上永住も可能な在留資格です。

この制度では、外国人労働者も日本人労働者と同等の労働条件を保障することが求められています。

今回の問題では、特定技能実習生が妊娠した場合に、避妊具の使用を勧められたり、罰金が科される可能性があると言われたりしています。これは、特定技能制度で保障されている労働条件を満たしていないと考えられます。

まとめ

 今回の問題は、特定技能実習生に対する深刻な人権侵害であると思います。

特定技能実習生は、母国の経済状況や政治状況などの理由で、日本に働きに来ています。彼女たちは、日本社会で自立するために、必死に働いています。そんな彼女たちが、妊娠を理由に職を失ったり、経済的に困窮したりする可能性があるとすれば、許されないことだと思います。

また、今回の問題は、日本社会の外国人に対する偏見や差別を反映しているとも言えます。特定技能実習生は、日本社会の構成員として、妊娠・出産の権利を有しています。彼女たちの権利を尊重することが、多様な価値観を認める社会の実現につながると考えます。

この問題を解決するためには、男女雇用機会均等法や特定技能制度の運用を徹底するとともに、外国人労働者に対する理解と配慮を深める必要があります。

具体的には、以下の対策が考えられる。

  • 送り出し機関やサポート機関に対する定期的な監督・指導を強化する。
  • 特定技能実習生に対する妊娠・出産に関する教育・研修を実施する。
  • 特定技能実習生に対する相談窓口を設置する。

これらの対策を講じることで、特定技能実習生が妊娠・出産を理由に不当な扱いを受けることがないよう、防止していかなければなりません。

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Posted by Ka Shiba