日本の、中国に対する認識の甘さに問題あり?

中国政府は、処理水の放出によって海洋汚染や食の安全性が脅かされる可能性があると主張しており、日本政府に対しても、処理水の放出を中止するよう繰り返し要求してきました。その結果として中国は日本産水産物輸入の全面停止に踏み切りました。

日本政府関係者は「中国が何らかの対抗措置を打ち出すとは思っていたが、輸入停止までやるとは想定外だった」などと述べています。

この問題は、日本政府や関係者が中国の行動や意図を過小評価し、その結果、適切な対策を講じることができなかったことに起因しています。

以下に、この認識の甘さについて、いくつか述べたいと思います。

  1. 外交政策の脆弱性:
     近年、中国の台頭により、アジア太平洋地域での影響力が拡大しています。しかし、日本はこの変化に対応するための外交政策を、アメリカとの同盟を頼りに曖昧なまま展開してきました。特に、中国の地域的な野心や対日圧力に対する具体的な対策が欠如しており、中国の行動に対する認識の甘い見方をしてしまっています。その結果、日本は中国に対して脆弱で影響力の乏しい立場に追い込まれています。
  2. 歴史的な誤算:
     過去の日本政府は、中国との対話や協力を強調し、問題を過小評価する姿勢を見せることが多かったように思います。
    2012年に日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化した時には、反日デモが勃発し、両国間の緊張が高まりました。しかし、これらの事態を想定していなかったことから、外交政策の誤算が生じました。
    過去にこのような歴史的な誤算があったにも関わらず、
    今回、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出開始を受けて、中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止した際にも、中国の行動に対する認識の甘さが根強く残っているように感じます。
    外交政策において、今までの教訓を生かし、中国の行動を予測し、適切な対策を早めに講じることが必要だと感じます。
  3. 経済への依存度:
     日本政府は経済的な利益や期待に固執し、外交政策を経済中心の視点で展開している傾向が見受けられます。
    日本は長らく中国市場に経済的に依存しており、中国への投資や輸出に頼ってきました。この経済的な依存度が高まる一方で、日本政府は中国に対して強硬な姿勢を取ることができず、外交政策に経済的な要因が大きく影響を与えています。経済的な損失を恐れて、中国に対して積極的な対抗策を講じることが難しいというのが、日本政府の認識の甘さが背後にある一因と考えられます。
  4. 情報収集と分析の不足:
     日本はしばしば自国の価値観や常識を基準にして中国の行動を解釈しようとしています。そのために中国の動機や意図を誤解することがあります。
    中国の行動や意図を正確に把握するためには、適切な情報収集と分析が不可欠です。しかし、日本の情報収集体制や中国に関する専門知識の不足が問題になることがあります。中国の政治体制や外交政策の特異性を理解するための専門家の不足は、政策立案において致命的な欠陥を生む可能性があり得ます。

中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止を行った政治的背景には、

 (1)半導体をはじめとした先端技術や台湾を巡る問題で、米国とほぼ歩調を合わせて対中政策を展開している日本をけん制するために、外交カードとして使っている。

 (2)景気の減速などを理由に中国国内で広がる不満の「ガス抜き」として、海外諸国に圧力を加えれば、人々の目を国外に向けさせることができ、不満の矛先をそらす格好の材料として使用している。

 (3)環境保護を名目に日本を「悪者」に仕立てあげ、中国が処理水を「核汚染水」と主張し、その放出を非難することで、中国は世界の海を守っていることをアピールする材料として使っている。

などが挙げられます。

まとめ、

以上の観点から、日本の中国に対する認識の甘さは、国際政治において重大なリスクを伴う問題と言えます。日本政府は、現実的で強固な外交政策を展開し、中国の行動に対する妥協ではなく、戦略的な対抗策を講じる必要があります。これには、国際的な連携、情報収集・分析の向上、経済への依存の多角化などが含まれます。中国及びロシアへの認識の甘さを排除し、国益を守るためには、より大胆で戦略的なアプローチが必要です。

最後に、日本政府は過去の経験から十分な教訓を得ておらず、中国に対する対策を練る際に甘さを繰り返しています。外交政策において教訓を生かし、中国の行動を予測し、長期ビジョンを描き、適切な対策を早急に講じることが必要です。

学び

Posted by Ka Shiba