中小企業が「下請けのままでは生き残れない」と島根・安来の「キグチテクニクス」がグローバル企業に大きく飛躍する

2023年12月26日

設備はアジア最大級で、顧客は海外一流メーカーという「キグチテクニクス」。
金属研磨会社である「キグチテクニクス」がグローバル企業に大きく飛躍した理由は、いくつかの要素が複合的に組み合わさった結果と言えます。

以下に、その主な要因を検証したいと思います。

1. 技術力の確立と国際的な評価:

  • キグチテクニクスは、高品質で強靭なヤスキハガネを用いた研磨技術を基盤にしていました。これにより、大手金属会社や関連会社の仕事を受注し、世界最高の航空機エンジンメーカーからも認証を受けていました。
  • 世界3大航空機エンジンメーカーの認証や国際的な試験規格の取得(例: Nadcap)は、企業の信頼性を高め、国際市場での競争力を向上させました。

2. 一貫した生産体制の構築:

  • キグチテクニクスは、試験素材の切り出しから熱処理、加工、試験評価までの一貫体制を築いていた。これにより、高品質、短納期、低コストを実現し、世界的な競争力を獲得していました。
  • 設備投資も積極的に行い、世界有数の試験ラボとして認知されていた。これが大手企業からの信頼を生み出し、受注の増加につながりました。

3. 積極的な国際展開とアメリカ法人の設立:

  • キグチテクニクスは2019年には、米国市場での拠点を設立し、国際的な展開に積極的に取り組んでいました。これにより、海外の顧客との連携を強化し、市場の多様化を図りました。
  • しかし、新型コロナ禍による航空機業界への打撃を受け、これを乗り越えるために新たな戦略を模索することとなりました。

4. 変化への適応力と新規事業の挑戦:

  • 2020年には、エンジンからEVへの開発シフトが一気に高まり、自動車メーカーからの需要が激減しましたが、これを逆手に取り、新たな事業領域への展開を模索しました。
  • 特に、CFRPの需要が急増していることに注目し、新素材に関するラボを設立して研究開発に着手。これにより、新しい市場に参入し、競争力を維持しました。

5. 技術の進化と特許取得:

  • キグチテクニクスは、高温での材料特性を評価する特殊熱処理炉を開発し、特許を取得。これにより、航空関連や発電関連の分野での受注が増加しました。
  • 技術の進化により、自社開発の熱処理炉がNi基超合金の特性を最大限に引き出せることが証明され、受注に対する需要が高まりました。

6. ピンチをチャンスへの転換:

  • 新型コロナ禍や自動車業界の変化をピンチからチャンスへと転換する柔軟性もありました。例えば、本業である試験ビジネスを成熟させ、航空業界で培った技術を宇宙や新エネルギー分野に展開する戦略を取りました。

7. グローバルな視点と戦略:

  • キグチテクニクスは、設立当初から世界最高のヤスキハガネを通じた加工技術を強化してきました。その後も、国際規格の取得や海外法人の設立など、グローバルな視点での戦略を展開しました。
  • 米国市場でのアメリカ法人の設立は、北米地域での存在感を高め、市場の多角化とリスク分散に成功した一環と言えます。

8. 持続可能な成長へのコミットメント:

  • キグチテクニクスは、長期的な視点で事業展開を計画し、持続可能な成長にコミットしてきました。ISOマネジメントシステムや国際的な認証プログラムの取得は、企業の品質管理と持続可能な成長への取り組みを示すものでした。
  • 新技術分野への進出や環境への配慮など、将来の市場の変化にも柔軟かつ適切に対応する姿勢が、持続可能な成長の土台を築いています。

まとめ:

キグチテクニクスは、単なる下請けの枠に留まらず、技術力の向上、一貫した生産体制の確立、国際展開、新規事業への挑戦、技術の進化と特許取得など、多岐にわたる戦略を展開してきました。

特に、変化への適応力とピンチをチャンスに転換する柔軟性が成功の要因となっています。CFRPや熱処理炉など、新しい技術領域への進出は、将来的な成長の可能性を示唆しています。

これは単なる製造業の成功例にとどまらず、持続可能性とイノベーションの融合が企業の未来を切り拓くことの重要性を示唆しています。

地域活性化

Posted by Ka Shiba