台湾が企業の供給網を海外展開、日本の地方都市が誘致する行動力に期待したい!

 2023年5月に発足した台湾の頼清徳新政権は、台湾の経済発展をさらに促進するために新たな戦略を打ち出しました。その中心にあるのが、台湾の中小企業が海外市場に進出しやすくするためのサプライチェーン(供給網)の海外展開です。この動きは、台湾が世界の経済シーンで重要な役割を果たす半導体産業などにおいて、競争力を維持し強化するための重要な施策です。

海外展開の背景

 台湾は、世界の半導体産業において極めて重要な地位を占めています。特に、TSMC(台湾積体電路製造株式会社)は世界最大の半導体受託製造企業として知られ、世界のハイテク産業における中核を担っています。しかし、地政学的な緊張が高まる中、台湾の経済は供給網の多様化とリスク分散を必要としています。中国と台湾の関係は依然として緊張しており、また米中貿易戦争の影響も受けています。これに加えて、新型コロナウイルスのパンデミックは、サプライチェーンの脆弱性を露呈し、地理的に分散された供給網の重要性を再認識させました。

海外展開の構想

 頼清徳新政権の構想は、台湾の中小企業がその供給網を丸ごと海外に展開することを支援するものです。具体的には、半導体産業を中心に、製造業やその他の有力産業がそのサプライチェーン全体を海外市場に移転させるためのインセンティブを提供することが含まれます。この構想には以下のような要素が含まれています。

1. 資金援助と税制優遇

 海外に工場を設立する企業に対する融資や補助金の提供、税制優遇措置などが計画されています。これにより、企業が海外進出に伴うコストを軽減しやすくなります。

2. インフラ整備

 進出先国・地域との協力を強化し、必要なインフラの整備を促進します。これには、交通網や通信インフラの整備が含まれ、企業が効率的に運営できる環境を整えることが目指されています。

3. 人材育成

 台湾国内外での専門人材の育成を強化し、現地での生産活動を支える技術者や管理者を確保します。これにより、進出先での即戦力を確保し、現地でのスムーズな事業展開を実現します。

4. 貿易協定と法的支援

 進出先国との貿易協定の締結や法的支援を強化し、企業が安心して事業を展開できるようにします。特に知的財産権の保護や契約の履行に関する問題を事前に解決することが重要です。

日本の地方都市で誘致する可能性

 このような台湾のサプライチェーンの海外展開の動きは、日本の地方都市にとっても大きなチャンスとなり得ます。特に、地方都市は以下のような理由から台湾企業の誘致に向いていると言えます。

1. 土地とコストの優位性

 東京や大阪といった大都市と比較して、地方都市は土地や労働力のコストが低いことが多いです。これにより、企業は低コストで工場やオフィスを設立することができます。

2. インフラの整備状況

 日本の地方都市は、全国的に整備された交通網や高品質なインフラを備えています。特に、空港や港湾、鉄道などの交通インフラが整っているため、国際貿易や物流の拠点としても利用価値が高いです。

3. 地元自治体の支援

 多くの地方自治体は、地域経済の活性化を目的として、海外企業の誘致に力を入れています。これには、税制優遇措置や補助金の提供、ビジネスマッチングの支援などが含まれます。台湾企業にとって、これらの支援は大きな魅力となります。

4. 文化的親和性

 台湾と日本は歴史的にも文化的にも深い繋がりがあります。特に、食品や観光、エンターテインメントなどの分野では、台湾と日本の間での相互理解が進んでおり、ビジネスの展開においてもスムーズなコミュニケーションが期待できます。

中海・宍道湖・大山圏域の自治体に誘致する行動力を期待

個人的には、中海・宍道湖・大山圏域の自治体が一丸となって台湾のサプライチェーンの一部を誘致することで、地域経済の活性化が大いに期待できると考えます。例えば、福岡県や熊本県などの九州地方は、すでに多くのハイテク産業が集積している地方もありますが、中海・宍道湖・大山圏域はこれからです、日本は地震の多い列島の中で、歴史的にも大きな地震はなく、半導体産業に必要な水も豊富な地域であることからも、台湾企業が進出する際のハードルが低くなるだけでなく、村田製作所などの既存の産業クラスターとのシナジー効果も期待できます。

さらに、中海・宍道湖・大山圏域の住環境や教育環境を整備すれば、海外企業の駐在員やその家族にとって大きな魅力となり得ます。中海・宍道湖・大山圏域は自然が豊かで生活コストも低いため、家族での長期滞在にも適しています。また、地方ならではの国際学校や多言語対応の医療機関を増やしていければ、安心して生活できる環境が整う事になります。

まとめ

 台湾の頼清徳新政権が打ち出したサプライチェーンの海外展開は、台湾の経済的競争力を維持しつつ、地政学的リスクを分散するための重要な戦略です。この動きは、日本の地方都市にとっても大きなチャンスとなり得ます。地方自治体は、台湾企業の誘致に向けたインセンティブを強化し、地域経済の活性化を目指すべきです。これにより、台湾と日本の経済関係はさらに強化され、双方にとって都合の良い関係が築かれることでしょう。